女性社員がハッピーだということを見せていく

―― 具体的な数値目標はありますか。

的場 女性活躍推進法などに基づいて一般事業主行動計画を策定しています。具体的には、2024年3月までに、採用における女性の割合を25%に、女性社員の割合を25%に、女性管理職の割合を9%に、育児休業取得率は男性も50%以上にする、という目標を定めています。

 女性の管理職の割合は、現在8%まできています。しかし、目標の9%は決して楽な数字ではありません。ライフイベントで辞めてしまう女性もいるので、入った分だけキープできるわけではありません。

―― 男性の意識改革も必要になりますね。

的場 子どもが生まれたとき、男性社員本人に育休取得を促すだけではなく、上長にも部下に育休を取らせるよう伝えるシステムになっています。課長研修、部長研修でも、ジェンダー平等についての研修は行っています。

 育児休業取得率で「男性も50%以上」と定めたのは、男性の意識改革も必要であり、自分で経験してこそ理解が深まると考えたからです。

―― 今の女性社員の割合はどれくらいですか。

的場 社員全体では、女性の割合は23%、総合職の割合は約10%です。

 今は企業で働く女性の数が少な過ぎます。日本全体で働く女性の絶対数を増やしていくことが、日本のジェンダー平等を進めていく始まりかな、と思います。

 伊藤忠商事も、女性をたくさん採用したくても、受けにくるのは男性のほうが絶対数が多い。うちで活躍してくれそうな人をと思って自然体で採用しますと、やはり受けにきた比率ぐらいになってしまうんですね。まずは受けに来てくれる女性の数がもっと増えてほしいと思っています。

――女性の採用をもっと増やすための方策はありますか。

的場 伊藤忠商事の女性社員がハッピーだというのを見せていくことかなと思います。「厳しくとも、働きがいのある会社」だと。

 伊藤忠商事は産業界に先駆けて2013年に「朝型勤務」を導入しました。午後8時から午後10時までの勤務は「原則禁止」、午後10時から翌日午前5時までの勤務を「禁止」とし、逆に午前5時~午前9時は深夜勤務と同じ割増手当が付くようにしました。さらに午前8時までに出社した社員には軽食を無料で提供することで、夜型の働き方を朝型に切り替えることを促しました。

 短時間で集中して仕事に取り組み生産性を上げることで、自分の時間ができ、それを育児の時間、自己研さんの時間、自分をシェイプアップするためのジムに行く時間などに振り分けるようになりました。それは本当にいいことだなと社員自身が気づき、いい回転になっています。

 また、生産性を上げるためにいろんなアイデアを試しています。例えば、カジュアルな服装を推奨する「脱スーツ・デー」を設けたりしています。

 一方、社員が安心して仕事に注力できるようにするためには、病気の予防が重要です。このため、がん検診の義務化、高額な高度先端医療費の全額補助、がんとの両立支援体制の構築、子女育英資金の拡大――の4つを主な施策としています。

 ロイヤルティー(忠誠心・愛着)とか一体感とか、そういうものをすごく大事にしていて、この会社で働いていることに誇りを持てるようにしたいと、みんなで頑張っています。

的場佳子(まとば・よしこ)
伊藤忠商事 執行役員 人事・総務部長
的場佳子(まとば・よしこ) 1986年3月、関西学院大学文学部英文科卒業。同年4月、伊藤忠商事入社、織物貿易第二部捺染織物ニット第二課。96年11月、海外実務研修生(PROMINENT/ニューヨーク)。98年5月、テキスタイル貿易部テキスタイル貿易第三課。2005年3月、外務省経済局経済連携課課長補佐。07年4月、伊藤忠商事秘書部(兼)業務部関西業務室。08年4月、秘書部大阪秘書室長。12年4月、業務部関西業務室長。17年10月、開発・調査部長代行(兼)開発・調査部関西開発調査室長(兼)秘書部。19年4月、執行役員に就任、調査・情報部長。21年4月、執行役員 人事・総務部長。

文/長坂邦宏 写真/木村輝