日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト始動を記念して、2020年5月15日にリモートで開催された日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト「ジェンダーギャップ会議~ジェンダー平等は企業の経営戦略だ~」。「ジェンダーギャップ121位の国からの脱却」と題した本イベントをまとめたリポートをお送りします。カゴメ取締役会長・寺田直行さん、ポーラ代表取締役社長・及川美紀さん、日経BP 日経xwoman総編集長・羽生祥子がパネリストを、進行を日経BP執行役員・高柳正盛が務めました(発言内容や肩書は当時のものです)。

「女性が幹部候補リストに載ってこない」理由とは?

日経BP執行役員・高柳正盛(以後、――) カゴメ、ポーラというと女性の購入者が多い商品を扱う企業ですが、様々な取材をしている羽生さん(日経BP 日経xwoman総編集長・羽生祥子、以後、羽生)は企業の中で意思決定を担う⼥性は少ないという話(「カゴメ、ポーラ トップが語る日本に残る男性社会の空気」)を受けてどうですか?

羽生 産業によらず、経営幹部に女性を起用する男性経営者がまだまだ少ないと思います。及川さんはポーラで女性初の社長に就任されましたが、その及川さんを社長に任命した男性経営者の判断も素晴らしいと思います。能力のある女性を幹部候補に挙げる意思決定者自体が少ないのです。

ポーラ代表取締役社長・及川美紀さん(以後、及川) 当時私は既に取締役で様々なことを提案したり実行したりしていましたので、女性だからというよりもそうした点で任命されたのだと思います。当社の場合は、皆さん定年を迎えて退職されていますが、既に3人の女性が役員におりました。また、現在は執行役員まで入れた役員10人のうち4人が女性です。

 ですから、私を社長に指名した指名委員会の人たちに「この辺で初めての女性社長を誕生させてみるか」といった性別に関する意向は、特になかったのではないでしょうか。おそらくフラットに次の役割を果たす人間として選ばれたのだと思います。

 私はこうした企業がほかにも増えていくことを願っています。「男性が」「女性が」という見方があったかもしれないし、女性を社長に任命することに「勇気」が必要だったのかもしれません。しかし、性別によらない選択――、例えば「及川のこういうキャラクターに任せてみたい」「このような業績を残してきた及川の可能性に懸けてみたい」と思っての判断がなされたのだと思います。性別ではなく、個性や業績、志という面で適した人材が役割を担うという社会が来ればいいなと心から思っています。

 チャンスや業績、志があっても、環境的にそれがままならずに閉ざされてしまっている人たちが、世の中にはまだ山ほどいます。たまたま当社の指名委員会は性別をあまり気にせずに選んだと思うのですが、世の中にはまだ「ちょっと女性は」「次はこの人(男性)の順番だから」「なぜだか分からないけれど女性が幹部昇進リストに載ってこない」ということが多いです。それを払拭するためには性別の差はないということを女性たちも見せていかなければいけないし、周りに理解を求めなければいけないということを強く感じます。

―― 男性側がどう考えて行動するかもカギを握っていると思うのですが、寺田さんは自分がトップになる前はいろいろなセクションの責任者をされていたと思います。その際、女性の部下の方たちにどのように接していたのですか?

カゴメ取締役会長・寺田直行さん(以後、寺田) 今思えば反省すべき点ですが、(女性社員に対する)「配慮」が強すぎたような気がします。会社全体を変えて、ダイバーシティ推進に力を入れだしてから、これまでのやり方や考え方、価値観が間違っていたと、はっきり感じるようになりました。あれから4年たった今は、性別でどうこうという意識は、私の中ではなくなっています。

―― 最初の頃は、女性に対して必要以上の配慮をしたこともあったのですね。

寺田 アンコンシャスバイアスのようなものがあったのだろうな、と思います。