育成支援の人材リストに女性を入れる
―― 及川さんはいかがですか?
及川 全く同感です。目標値を立てないと、(女性が管理職候補者の)リストに挙がってきません。育成支援の人材リストに女性を入れることが大事です。当社も女性管理職比率は約3割なのですが、残念ながら、まだ女性活躍の視点が定まっていない管理職メンバーもいます。
そのため「次の管理職候補を挙げてください」というと男性候補者しか挙げてこない男性管理職が少なからずいます。「あなたの部署にこういう人材はいませんか?」と聞くと「あぁ、そういえば彼女もいましたね」と答えるので、その女性部下の優秀性は認めていることが分かります。それなのに何も言わずにリスト作成を求めると女性の候補者が漏れてしまう。あるいは、男性の名前がズラッと書いてあって、最後に2人ぐらい女性が載っている、という感じです。
でも管理職になる前のボーナス査定や勤務評価を調べてみると、男性の7割がA評価で、女性がみんなC評価かというと全然違います。たまたま出産と重なって昇格のタイミングが遅れることもあるのですが、候補者リストにはちゃんと載せてほしいわけです。ですからやはり会社として目標値を掲げて、しっかり話し合いのテーブルに乗せたあとで、公平な競争をさせるということが大事なのではないでしょうか。
「リストに女性を」と言い始めて数年たった今では、ほぼちゃんと女性もリストに載ってくるようになりましたが、一部では上司から「女性の候補者はいないの?」と声を掛けないとまだ上がってこない場合も見受けられます。
―― ポーラのような会社でもそうなのですね。
及川 たまたま当社は人事の担当役員が女性で、私も含めて女性役員が4人いるので、「あれ? この部署の候補者リストは女性が少なくない?」って気付いたりするのですが、もしかすると気付かない企業もあるのかもしれません。となると、やはり目標はとても大事になってきます。
そのときに管理職になる前の層にどれだけ優秀な人材がいるのかということを、公平な勤務評定や営業成績、企画の実現度合いなどをしっかり見ていくことが大事だと思います。
―― どの企業でも「そろそろ本気で取り組まなければ」と思っているでしょう。今のような男社会の中でどこを大切にしたらいいのか、何から手を付ければいいのでしょうか。
寺田 経営者自らが日本型の古い雇用や働き方という固定観念を変えることですよね。いろいろな制度が定着するにつれて、従業員の発想も変わってきます。
―― 羽生さん、いかがですか?
羽生 男性にとっては面白くない話かもしれませんが、管理職候補になる前の女性の人材から地道に増やすことが大事だと思います。日経xwomanにも、日経AIRAという40~50代の女性管理職向けのメディアがあり、そこでよくリーダーシップに関する特集を掲載します。その中で「女性が透明人間化してしまう」という話がよく出てきます。
例えば、従来の価値観に基づいて「こういう人はリーダーに向いている」と考えられるタイプとは異なるタイプのリーダーシップが女性にはあるのではないか、という議論があります。そういう人材を及川さんがおっしゃった管理職候補者リストに入れていくことが大事でしょう。
例えば、「命令がうまい」「アメとムチを使い分けることができる」「集団の先頭に立って率いていく」といういわゆる従来型のリーダーシップとは異なるタイプなのでリストに載りにくい。でも「聞く力」や「育てる力」が強く、後ろからメンバーを支えていくタイプのリーダーシップも組織運営には有効です。そのような女性を透明人間化しないことが大事だと思います。