2022年5月13日の「日経SDGsフェス ジェンダーギャップ会議」で、「経営に求められる多様性と情報開示」をテーマに、有識者や企業の役員によるセッションが開催されました。基調講演には、民間出身者として公務職場における働き方改革をリードする、人事院総裁・川本裕子さんが登壇。「人を育てる組織とダイバーシティ ~今、組織に求められる変革~」と題した講演のリポートをお届けします。
「なぜ女性活躍なのか」という共通理解がなかなか進まない

本日は、「人を育てる組織とダイバーシティ」をテーマにお話ししたいと思います。
ダイバーシティとイノベーションは、正の相関関係にあるといわれます。ダイバーシティマネジメントとは、多様な人材がその能力を最大限発揮できる機会を提供することで、イノベーションを生み出し、価値創造につなげていく経営・組織運営ともいえるでしょう。
ダイバーシティマネジメントは、4つのパラダイムに分けて考えることができます。最初は、多様性を回避・拒否してしまう段階。次に、違いを理解しないまま同化させようとする段階です。既存のシステムに取り組もうとするため、いろいろと弊害が起きてしまう。3つ目は、違いを認めて価値を見いだす段階になりますが、気を使いすぎて逆効果となることも。例えば、昇進の時に女性に対して「本当にできる?」と質問してしまうようなケースが、問題になっています。そして最後は、いよいよ違いを生かして、競争において優位に立つ段階です。戦略的なアプローチができるようになり、これが柔軟な組織への変革ツールになります。先進的な組織では、1990年代からこうしたアプローチを取ってきましたが、日本の多くの組織は、まだ第2、3段階の間でとどまっているように感じられます。

続いて、女性の社会参加については、日本でもかなり雰囲気が変わりつつありますが、意思決定層になるとまだまだ圧倒的に数が少ない。その理由として、「なぜ女性活躍なのか」という共通理解がなかなか進まないことが挙げられます。ただ、逆にいえば、既存の人事制度のゆがみを見直す組織変革のチャンスでもあります。人事戦略の見直しと評価基準の明確化など、職場の環境整備が欠かせません。