海外の女性から敬遠される日本企業

 根強い性別役割分担意識からの脱却も必要です。そもそも学校修了時点で男女に明確な能力差はなく、あるのは、「バイアス」と「思い込み」。高度な知的水準にある日本の女性たちが家庭外でも社会的な価値を創出しなければ、日本経済にとって巨大な損失です

 残念ながら、日本のジェンダーギャップの現状は、世界的にも有名です。経済産業省の資料に掲載された民間企業の調査によると、日本企業が海外で外国人材を採用する場合、男性よりも女性から敬遠される度合いが強い。そこには、日本の組織の同質性があるのではないかと思います。かつての強みが弱みに変化してしまった。同じような教育を受け、同じ世代を生きてきた中高年層の日本人男性が組織の幹部を占め、海外経験のある人、女性、マルチカルチャーを理解する役員比率は極端に少なくなっています。こうした状態は、男性の多様性も許容していないということになり、非常に大きな問題だと思います。

「男性の多様性も許容していないことは大きな問題」(川本さん)。登壇資料から
「男性の多様性も許容していないことは大きな問題」(川本さん)。登壇資料から

 最近では、「無意識の偏見」に気づくことから行動を見直していくトレーニングも盛んになっています。ある有名なテストがあります。「父親と息子が交通事故に遭い、息子は一命を取り留めて病院に運ばれた。しかし、そこに来た外科医が患者を見て『この患者は手術できない。自分の息子だから』と言った」。この話を聞いて、中身が理解できるか、という問いがあります。「意味が通らないのでは?」と思われた方は、もしかして無意識の偏見があるかもしれません。これは「外科医がお母さん」という話なのですが、外科医=男性医師をイメージしてしまった人もいるのではないでしょうか。自分が潜在的に持っている無意識の偏見に気づくことが、ジェンダーギャップ解消の第一歩です。

旧来の日本の評価システムが、若い世代の心情にそぐわない

 続いて、21世紀型の人材活用――人材を成長させる組織とはどういうものかについて、考えてみたいと思います。日本の組織が多様性を受容する上で、やはり根本的な問題は、「長時間労働」「人事評価」「性別による役割意識」にあります

 年功序列と終身雇用の雇用形態においては、長時間労働で忠誠心を示すことによって、職の安定が得られていました。しかしそれでは、与えられる仕事に費やす時間や勤務地に制約がなく、職務内容も不明確となります。要するに、正社員が家庭責任を負って家事・育児や介護をすることは歓迎されない。それが、今の若い世代の心情とそぐわないものになってきています。

 こうした人事評価のシステムをどう変えていくのかは、日本の組織にとって大きな課題です。根底から変えることは時間とエネルギーを要するため、今までのやり方から進化させていく必要があるでしょう。

 ある調査で女性に働き続ける理由を聞いたところ、多くが「仕事が面白かったから」と答えたといいます。 能力に応じて責任ある仕事を任され、昇進していくと、見える景色も変わっていき、さらに仕事が面白くなる。男女問わず、こうした良い循環を起こしていくことが非常に大事です。従来の人事制度のゆがみを見える化し、これまでとは違うマネジメント能力を、組織の構成員が養っていくことが何より大事だと思います。