「成長型思考」の組織になれるか

 さて、個人の成長はどうしたら起こるのかについてお話しします。これに関しては、スタンフォード大学のキャロル・ドゥエック教授が提唱している考え方がヒントになると思います。

 人間には、「成長型思考」(グロースマインドセット)と「固定的思考」(フィックストマインドセット)があるそうです。成長型思考は、知的発展のポテンシャルを信じ、他人の成功も自分の失敗も全てを「学んで成長する機会」と捉える前向きな心持ちのこと。対して固定的思考は、知性は試験の結果や学位などで示されるものであり、静的なもの、固定されたものであるという捉え方です。行動自体も内向きになり、挑戦を回避したり、他人の成功を脅威に感じたり、嫉妬してしまいます。

 どんな人も固定的思考を持っています。しかし人間の脳には柔軟性もあります。「知性は成長させることができる」と認識することが、個人の成長にとって非常に大事です。成長型思考は、他者のフィードバックを受け入れ、改善し、自分の成長につなげていく前向きな思考です

 これを「人を育てる組織」に当てはめて考えてみます。組織を構築する上では、人材評価や次世代リーダー選抜のシステムをつくり込み、組織のカルチャーや、組織の強みとなるスキルを定義することが欠かせません。その際に重要なのは、明確なビジョンとミッションです。さらに、これらに沿った行動規範があると、価値観が共有されるため、権限を現場チームに移譲することができます。組織全体で、自律性や内発性が最重視されるようになります。

 多様性のある組織づくりには、メンバー同士が共有する価値観があることが大前提です。それがしっかりとできていると人材も育成され、組織のパフォーマンスも向上していく。「人を育てる組織」になっていくのではないでしょうか。

 個人に対して、強みと課題をフィードバックして成長を促すことによって、組織の目的が達成される。やはり、いわゆる「オープンなカルチャー」を持つ組織というのが、人が育っていく組織だと考えます。

川本さんの登壇資料から
川本さんの登壇資料から

文/西尾英子