「女性の管理職目標30%」は、タスク型ダイバーシティのため
では、この「知の探索」を促すにはどうすればいいか。その第一歩が「人材の多様化」です。同質人材ばかりでなく、バラバラな人が同じ組織にいることで、知の探索が勝手に起きていきます。
そのためには乗り越えなくてはいけない壁があります。ダイバーシティには「タスク型」と「デモグラフィー型」という2種類があり、タスク型は能力や知識、経験値など内面の多様性、対してデモグラフィー型は性別や国籍といった属性での多様性を指します。
日本で今、ダイバーシティというと、属性の多様性であるデモグラフィー型です。研究によると、タスク型のダイバーシティは、組織のパフォーマンスが高くなる傾向がありますが、デモグラフィー型のダイバーシティは、効果だけを見ると組織にとってマイナスの効果を生むことも。
なぜなら私たちは、大勢の人がいると、「男性グループ」「女性グループ」というようにグループ分けして考えてしまい、その結果、組織の断層=フォルトラインができてしまう。こうしたデモグラフィー型の負の効果に対し、組織内の「無意識の偏見」を取り除くことが重要です。イノベーティブな会社として知られるグーグルでさえも、こうした断層ができてしまうため、アンコンシャスバイアスの研修を徹底して取り入れています。
私は「女性の管理職目標30%」に賛成ですが、これも経営学的に見て必要性があるからです。ジェンダー・ダイバーシティはイノベーションを起こすために重要で、そのためには多様な「知」が必要。そうなると、タスク型のダイバーシティが大事だから、女性や外国人など多様な人材が増えるべき。つまり、「女性の管理職目標30%」は、タスク型ダイバーシティのためなんです。
一番変わらなくてはいけないのは、経営陣や管理職
組織のパフォーマンスを上げるには、多様な人が自由に意見を言えることが大事。そのためには「心理的安全性」を高める必要があります。一番変わらなくてはいけないのは、経営陣や管理職です。会議も自分が主導するのではなく、ファシリテーターとして意見を引き出す。
例えば、違和感のある発言が出ても、頭越しに否定するのではなく、「なるほど。◯○さんはこう言っているけれど、みんなはどう思う?」と。これからの時代は、心理的安全性を高めるファシリテーターのいる組織が強い。
そこで、日本企業の経営陣や管理職層の男性に、ぜひおすすめしたいのが、「マイノリティー経験」をすることです。マイノリティー側の感覚を持ったことがないと、「意見が言いづらい」という感覚が理解しづらい。一番いいのは、お子さんがいる方は、保護者会に行ってください。私も一度、妻に頼まれて保護者会に行ったところ、完全にマイノリティーで、なかなか自分の意見が言いづらいという体験をしました。
今一度考えていただきたいのは、なんのためにダイバーシティをするのか。ダイバーシティは、イノベーションのために必須。そのためには、組織全体を変えないと進まない。それには、無意識の偏見を外し、心理的安全性を高める必要があるということです。
今日の私の話が少しでも皆さんのヒントになればと思います。
構成・文/西尾英子