2021年5月10~14日に日経SDGsフェスティバルがオンラインで開催され、最終日の14日、「日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト ジェンダーギャップ会議」が行われました。会議では2つのパネルディスカッションも行われ、そのうちの一つ、「コーポレート・ガバナンス・コード改訂から考える、ジェンダー平等と組織の成長」について、詳しく誌上で再現します。今回に続く下編「経営は『ヒト・モノ・カネ』から『ヒト・ヒト・ヒト』へ」も併せてお読みください。

左から、日経BP編集委員・羽生祥子、金融庁総合政策局CSO(チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー)・池田賢志さん、日本CFA協会理事、新生企業投資マネージングディレクター・黄春梅さん
左から、日経BP編集委員・羽生祥子、金融庁総合政策局CSO(チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー)・池田賢志さん、日本CFA協会理事、新生企業投資マネージングディレクター・黄春梅さん
池田賢志(いけだ・さとし)さん
金融庁総合政策局チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー。2019年3月、金融庁に「チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー」のポストが新設されたことに伴い同職に就任。同職においては、気候変動関連の財務情報開示に係るTCFD提言の日本における実施を担当すると同時に、金融庁内のSDGs取組戦略プロジェクトチームの事務局を務めるなど、サステナブルファイナンスに関する職務を幅広く所掌。
黄春梅(ホァン・チュンメイ)さん
日本CFA協会理事、新生企業投資マネージングディレクター、新生インパクト投資代表取締役。2005年より新生銀行にて一貫して自己勘定投資業務に従事。ベンチャー投資、バイアウト投資、ファンド投資などを担当、ファンドの投資委員、上場企業を含む複数の投資先およびファンド運用会社の取締役や監査役を歴任。2017年より新生銀行グループにて、邦銀系初のインパクト投資ファンド「子育て支援ファンド」および2号ファンド「はたらくFUND」を創設。上海財経大学経済学部卒、神戸大学経営研究科修士号。米国公認会計士、CFA協会認定証券アナリスト、日本評価学会認定評価士。日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」受賞。

CG改訂は企業価値向上の好循環が狙い。目玉がダイバーシティ

日経xwoman編集委員 羽生祥子(以下、――) 今年6月にコーポレートガバナンス・コードの改訂(CG改訂)が行われます。コーポレートガバナンス・コードとは、一言でいえば企業統治(コーポレートガバナンス)の原則を定めたものです。今回の改訂は2022年の東証再編と関連するものでもあり、それによって生じる投資家マインドの変化に注目しています。今日のディスカッションでは、CG改訂をテーマにしながら、ジェンダー平等と企業の責任を討論していきたいと思います。まずは池田さんから自己紹介と仕事の紹介をお願いします。

金融庁チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー 池田賢志さん(以下、池田) 2019年3月、金融庁に「チーフ・サステナブルファイナンス・オフィサー」のポストが新設され、その初代に就任しました。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)提言の国内実施を含め、サステナブルファイナンスを巡る課題について国内外での取り組みを所掌しています。

 なぜ金融庁がサステナビリティやSDGs(持続可能な開発目標)に取り組むのかということですが、金融庁のパーパス(存在意義)を考えたときに、企業・経済が持続的に成長し、その結果国民の厚生が増大していくことが金融庁の目標だとすると、その達成のためには企業価値の向上が必要になります。企業価値の向上にとってSDGsの17のゴールは関連性のあるものだと考え、これまで取り組んできました。コーポレートガバナンス・コードは、金融庁が東京証券取引所と共に主体となって作成しています。

―― CG改訂は企業価値向上のために必要ということですね。では黄さん、自己紹介をお願いします。

日本CFA協会理事 黄春梅さん(以下、黄) 日本CFA協会には理事として関わり、主にアドボカシー・コミッティのバイスチェアとしてESG関連の普及活動を担当しています。日本CFA協会理事はボランティアでして、本業は新生銀行グループで投資業務に15年以上携わっています。今はインパクト投資(経済的なリターンと社会的・環境的なリターンの両立を目指す投資)をメイン業務としており、「子育て支援ファンド」「はたらくFUND」と2本のインパクト投資ファンドを運営しています。多様な働き方や生き方の創出を目指しており、子育てや介護、新しい働き方関連のソーシャルベンチャーを投資・支援しています。

 日本CFA協会のことも少し紹介させていただきます。CFAとはChartered Financial Analystの略で、CFA協会が認定する証券分析・投資運用の専門資格のことです。世界約160の国・地域に150以上のメンバーソサエティーがあって、約17万人の会員がいます。日本CFA協会の会員は約1200人。女性比率は10%。職業倫理、企業統治、ESG(環境・社会・統治)、ダイバーシティ&インクルージョン(多様性と包摂)といった理念の普及にも力を入れています。

―― それでは本題に入りたいと思います。最初にコーポレートガバナンス・コード改訂とは何か。池田さん、簡単に解説をお願いできますか?

池田 コーポレートガバナンス・コードは2015年に制定され、2018年6月に一度改訂されていますので、今回が再改訂になります。もともとコーポレートガバナンス改革の中で、スチュワードシップ・コードとコーポレートガバナンス・コードが両輪となって進んできました。

 スチュワードシップ・コードは、機関投資家が投資先の企業の価値向上に向けて働きかけを行うさまざまな規律のことです。一方のコーポレートガバナンス・コードは、中長期的な企業価値向上に向けて、企業がどのようにガバナンス体制を整備していくかをまとめた規律です。この2つの規律によって、企業価値向上の好循環を生んでいこうというのが大きな狙いです。

引用/金融庁作成(記事中の図版はすべて、発言者による作成の資料から一部を抜粋しています)
引用/金融庁作成(記事中の図版はすべて、発言者による作成の資料から一部を抜粋しています)

社内取締役を内部で育成していかねばならない

池田 改訂の一つの目玉がダイバーシティの確保です。上場企業における女性役員の人数はこの10年余りで増加してきたとはいえ、役員の女性比率でいえば6.2%にとどまっています。フランスは40%半ば。そうした国に比べれば、だいぶ低い状況にあります。

 また、女性の社外取締役がいる企業は36.8%ですが、女性の社内取締役がいる企業は6.8%と少ない。企業が内部で女性の幹部人材を育成することから取り組んでいかなければダイバーシティは実現できません。

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