2022年5月13日(金)に行われた、日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト「『ジェンダーギャップ会議』~経営に求められる多様性と情報開示~」。プログラムの最後に行われた「女性が活躍する会社BEST100/2022 総合ランキング1位資生堂に聞く、D&I施策最前線」のイベントリポートをお届けします。前編に続き、資生堂 代表取締役 常務 鈴木ゆかりさんに話を聞きました。

女性役員との対話で、若手のリーダーシップを引き出す

日経WOMAN編集長 藤川明日香(以下、藤川) 女性リーダー育成塾「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」(NLW)以外にも、新たな取り組みが始まっていると聞きました。

資生堂 代表取締役 常務 鈴木ゆかりさん(以下、鈴木) 2020年からは女性役員と女性社員が直接対話するメンタリングプログラム「Speak Jam」を行っています。まだ試行錯誤中ですが、普段接する機会のない女性役員と社員とが壁を取っ払って話すことで、書類だけでは分からない生の声や悩みを聞くことができます。

日経WOMAN発行人 佐藤珠希(以下、佐藤) どの階層の社員と、どんなテーマで話すのでしょうか。

鈴木 リーダーを全く意識していない非管理職の社員が対象です。リーダー=管理職というイメージがあるようですが、管理職以外の人もリーダーシップをとって仕事を進めていくことは重要です。それが将来のマネジメントにつながると気づいてもらえるように、どんなリーダーやリーダーシップがいいと思うかをテーマに話しています。

 特に今の若手が将来をイメージしにくいのは「これからいろいろなライフイベントがあると、責任ある仕事ができるのか不安」と尻込みしてしまうことも原因にあるようです。途中で変更があってもいいから、新入社員のときからリーダーシップをとっていく姿を自覚してもらうことが重要だと気づきました。ですから同年代の人の話を聞いたり、横のつながりをつくって盛り上げたりしています。

藤川 成果を出しているのに自信が持てない「インポスター症候群」に陥っている女性には、どんな働きかけをしていますか。

鈴木 私自身も自信満々で毎日を送っていないですし、結構、ドキドキしながら乗り切っているんですよ(笑)。ですから、「自分らしくていいんだよ」というメッセージを発信することが重要だと思っています。「私にできることは何か」を考え、「自分らしく、できることをやればいい」という原点に立ち返るのは有意義です。

「自分らしくていいんだよ、というメッセージを伝えることが大切」と、資生堂 代表取締役 常務の鈴木ゆかりさん
「自分らしくていいんだよ、というメッセージを伝えることが大切」と、資生堂 代表取締役 常務の鈴木ゆかりさん

鈴木 女性は真面目な人が多いけれど、「成果を出さなければいけない」「100点じゃないとダメ」という思い込みはやめたほうがいい。そもそも、そのポジションに就いたのは、自分だけの責任ではありません。“できる”と思うから選ばれたのであり、あなたを選んだ人がいるはずです。

藤川 リーダーたちに「失敗してもいい」というメッセージを伝えることも大切ですね。

鈴木 「成功=物事をうまくやり切る」と考えると緊張しますが、私たちは社員に成長してほしいし、今日より明日できることが増えてほしいのです。万が一失敗しても、そこから学んだことが次に生きることは間違いありません。やり方はいろいろあっていいし、むしろ失敗から学んで次に進むことのほうが重要で、会社もそれを望んでいます。