会社で過ごす時間の長さと成果は比例しない

佐藤 女性活躍に欠かせない柔軟な働き方も推進していますが、自由な働き方と生産性の両立は難しいという企業の声もあります。働きやすさと生産性の両立のために、どのような仕組みをつくっていますか?

「女性が活躍するには、働き方改革も重要」(日経WOMAN発行人 佐藤珠希)
「女性が活躍するには、働き方改革も重要」(日経WOMAN発行人 佐藤珠希)

鈴木 コロナ前は在宅勤務制度の利用者は一部に限られていましたが、コロナ禍で在宅勤務が必須になりました。緊急事態宣言時は全社で一律に原則在宅勤務を実施しましたが、工夫しながらやってみるとワークライフバランスを取りやすいことが分かったので、コロナ収束後も出社と在宅の両方を活用しながら最高の成果を出すことを目指します。実際、21年からはスーパーフレックスになり、コアタイムに縛られずに自由に働く時間を選べる体制が確立しています。子育てや介護をしている人など、時間的制約がある人も柔軟に働けるので、多様な能力が今まで以上に生かされるといいな、と思っています。

 また、働き方が変わった結果、会社で過ごす時間の長さと成果が比例しないことははっきりしたので、ジョブ型雇用制度への転換を図りました。それぞれの仕事内容と、今期の成果目標などを上司と話し合ってクリアにし、目標に対するアウトプットをそれぞれが自覚し、質を高めていきます。上司との1on1を頻繁に行ってミッションやゴールのすり合わせやプロセス管理を行い、きちんと部下にフィードバックしていくことが重要ですね。

佐藤 働き方の多様化とジョブ型は相性がいい、ということでしょうか。

鈴木 ジョブ型では明確なゴールがあってアウトプットが求められますが、目標までの手法の自由度は増します。働き方の多様化とジョブ型を同時に推進することが、相乗効果を生むと感じます。コロナ収束後に向けて、働く人がそれぞれの事情を踏まえて、どうすればもっともアウトプットを出せるのか考え、チームの方針とすり合わせて最良の解を見つけていくのがこれからの作業です。

佐藤 資生堂の女性管理職比率は他社に比べて高いですが、今後の課題はありますか?

鈴木 資生堂は長い間、女性活躍に取り組んできました。私が入社した1985年ごろは第1ステージで、結婚・出産すると辞めざるを得ない人も多く、私の同期も10年以内に半分に減りました。その後制度が充実し、第2ステージでは育児と仕事を両立できるようになり、今では結婚・出産を理由に退職する人はほとんどいません。第3ステージの今は「辞めなくていい」ではなく、女性に限らずすべての人に本当に活躍してもらうことが目標です。

 女性管理職比率は右肩上がりで伸びていて、22年1月で37.3%になりました。でも決して十分ではなく、50:50が当たり前と考えているので、そこを目指していきます。そのためには早い時期からポテンシャルのある人材を育て、自ら管理職を目指してもらう必要があります。また、たしかに管理職の女性比率は高いけれど、職種間のばらつきも課題です。例えば、工場の生産部門や営業の最前線などはマーケティングに比べて女性管理職比率が低いので、意識的にターゲットとして推進していく必要があります。

佐藤 そのための具体的な戦略はありますか?

鈴木 他部門の成功事例を踏襲する面もあるし、現場でヒアリングしてその部署に合わせた形をつくっていく側面もあります。実際、今年は資生堂の国内工場で初となる、女性の工場長が誕生しています。積極的に(人材を)動かしていくことと同時に、女性リーダーの活躍を分析し、メリットを明示することでより自信を持って推進していけると思っています。