セブン&アイ・ホールディングスは2022年3月に「重点課題」を改訂し、新たに7つの重点課題を策定。重点課題4を「多様な人々が活躍できる社会を実現する」、重点課題5を「グループ事業を担う人々の働きがい・働きやすさを向上する」とし、多様性や働きがい・働きやすさ向上にグループ全体で取り組む考え方を明確にした。さらに“一丁目一番地”と位置付けられる女性活躍推進に、改めて注力する方針を打ち出している。セブン&アイグループのD&I推進プロジェクトリーダーを務める藤本圭子さん(セブン-イレブン・ジャパン取締役常務執行役員 人事本部長)に、多様性および女性活躍推進に対する考え方、取り組みについて聞いた。(聞き手は平田昌信・日経xwomanプロデューサー)

セブン-イレブン・ジャパン取締役常務執行役員 人事本部長の藤本圭子さん。1979年大学卒業後、エンジニアリング会社、外資系ホテル勤務を経て、88年セブン-イレブン・ジャパンに入社。25年にわたり鈴木敏文氏の秘書を務めた。2006年執行役員秘書室長、12年6月セブン&アイグループ ダイバーシティ推進プロジェクトリーダー、14年3月取締役執行役員 秘書室長、15年3月取締役常務執行役員 秘書室長、16年3月取締役執行役員 ダイバーシティ推進部長、20年9月より現職
セブン-イレブン・ジャパン取締役常務執行役員 人事本部長の藤本圭子さん。1979年大学卒業後、エンジニアリング会社、外資系ホテル勤務を経て、88年セブン-イレブン・ジャパンに入社。25年にわたり鈴木敏文氏の秘書を務めた。2006年執行役員秘書室長、12年6月セブン&アイグループ ダイバーシティ推進プロジェクトリーダー、14年3月取締役執行役員 秘書室長、15年3月取締役常務執行役員 秘書室長、16年3月取締役執行役員 ダイバーシティ推進部長、20年9月より現職

2006年、当時の鈴木敏文CEOが「女性役員比率20%」宣言

―― セブン&アイ・ホールディングスは2022年3月に「重点課題」を改訂しました。

藤本圭子さん(以下、藤本) 重点課題を初めて策定したのは2014年ですが、今日に至るまで社会の変化が急速に進み、社会課題も多様化しています。これまでの重点課題ではカバーできないことも出てきましたので、様々なステークホルダーへのアンケートを実施し、5000件を超える回答と1000件を超えるコメントをいただきました。また幅広い知見を持つ有識者の方々との対話も行いました。そうしたステークホルダーとグループ内の意見を考慮し、持続可能な社会の実現に貢献していくため、新たに7つの重点課題を策定しました。

セブン&アイグループの7つの重点課題
セブン&アイグループの7つの重点課題

―― 重点課題4の多様性、重点課題5の働きやすさ向上の2つが、ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)に関わる課題ですね。多様性と女性活躍推進についての背景、考え方をお聞かせください。

藤本 当社グループでは1993年に女性の役員が誕生し、女性が活躍できる素地はもともとありました。2006年に、当時の鈴木敏文会長兼最高経営責任者(CEO)が当社グループの経営方針説明会で「今後は役員の20%を女性にする」と宣言しました。常にイノベーションを念頭に置きながら会社経営をしていた鈴木は、もっと積極的に女性を登用し、男性の画一的な考え方に偏らず、女性の視点やアイデアを取り入れ、時代のニーズに対応すべきだとしました。

 当社グループに来店する多くのお客様が女性です。そのお客様のニーズにきちんと対応するためには、女性のお客様に合った視点や生活感覚を売り場や商品開発やサービスに生かすべきだと考えました。

 この宣言によって、各グループ会社の社長の間で女性を積極的に登用する意識が芽生えていきました。中核事業会社から女性執行役員が誕生するようになり、私も2006年にセブン-イレブン・ジャパンの執行役員に就任しました。

 2012年6月にはセブン&アイグループの「ダイバーシティ推進プロジェクト」が発足し、私がプロジェクトリーダーに就きました。そのプロジェクト発足の起点になったのは、セブン&アイ・ホールディングスの伊藤順朗取締役常務執行役員経営推進本部長による「ダイバーシティ推進プロジェクトをつくり、もっと女性活躍を推進すべきじゃないか」という提案でした。

 ですから、2006年の鈴木による宣言、2012年の伊藤による提案が、セブン&アイグループの多様性と女性活躍推進の大きなきっかけとなったと言っていいと思います。

「ステークホルダーとグループ内の意見を考慮し、持続可能な社会の実現に貢献していくため、新たに7つの重点課題を策定しました」
「ステークホルダーとグループ内の意見を考慮し、持続可能な社会の実現に貢献していくため、新たに7つの重点課題を策定しました」