管理職候補者対象のセミナーで抱いた大きな期待

―― D&I推進の新たな取り組みとして、「女性エンカレッジメントセミナー」を始めたそうですね。

藤本 はい。エンカレッジメントセミナーは、管理職を目指す女性社員の育成を目的に、昨年(2021年)から開催しています。今年は、事業会社22社から管理職候補の女性を選抜し、成長意欲を高め、管理職を目指したいという意識を持ってもらうためのセミナーを年7回行います。参加するのは課長候補者で約80人です。

 参加者には、事業会社の社員である前にセブン&アイグループのメンバーであるという意識を持ってほしい。たとえ今の事業会社での活躍をイメージできなかったとしても、グループの中で活躍できる場がいっぱいあることを知ってほしいと思っています。

 セミナーでは、セブン&アイ・ホールディングスの井阪隆一社長がグループの経営方針について話し、その後、各役員が担当分野の話をして、最後に伊藤取締役常務執行役員がグループの理念や企業価値向上について説明します。外部から招いた講師の講演もあります。オンラインで開催することで、全国各地から、時短勤務の女性も参加しています。

 私としては参加した女性社員たちに、成長したいという意識を持ってもらい、成長したらどういう貢献ができるのかを考えてリーダーを目指してもらいたいと思っています。

―― リーダーになるためのカリキュラムもあるのですか。

藤本 セミナーのテーマは「グループシナジーを生かした商品開発」や「グループの理念・社会課題解決と企業価値向上」などですが、それぞれ講演の半分の時間はご自身について話してもらうようにしています。各講師の仕事観や挑戦、失敗談などが聞けて、どう壁を乗り越えたらいいかなど自分に置き換えて考えてみることができます。

 これは昨年の例ですが、管理職を目指したいという女性が、セミナー受講後には約1割増えたことがアンケートで分かりました。講師自身の話を聞いて、「ひょっとしたら私もできるかもしれない」と意識が変化したのかもしれません。

 またセミナー受講前と現在の変化について参加者の上長に聞いたところ、仕事に対して前向きに取り組めるようになってきたなど「変化があった」と回答する人が9割以上にも上っています。

 先日も、エンカレッジメントセミナーで大きな期待を抱けるようなことがありました。会社も部門も異なる参加者がグループに分かれてディスカッションする時間があるのですが、そこで「グループの垣根を越えて、何か新しいビジネスができないかな、新しい商品開発につなげていきたい」という意見が出てきたんです。それを聞いて、「小さなビジネスのタネが大きく花開くんじゃないか」と私は感じました。

 弊社グループには「セブンプレミアム」というプライベートブランド商品があります。グループ横断で開発している商品で、コンビニやスーパー、専門店など、グループの各店舗で販売されています。女性たち一人ひとりがそれぞれの事業会社の視点を持ち寄り、自ら商品開発する時が来るんじゃないか。セミナーの参加者がグループ視点で何ができるか考えてみる、そういう意識が芽生えてきたことに、私は大きな可能性を感じています。

管理職はちゅうちょせずに受けなさい。ちゅうちょするのは受けてからでもいい

―― 日本ではリーダーになることにちゅうちょする女性が多いです。管理職や執行役員を目指す女性たちに、メッセージをいただけますか。

藤本 ちゅうちょするのは当然だと思います。昇進を打診されたらうれしいけれども、その一方で自信がない。自信を持てないことがちゅうちょすることにつながる。特に女性は自己肯定感が低い人が多いといわれていますので、ちゅうちょすることはずっとなくならないと思います。

 でも、私はそういう人の方が管理職に向いているのではないかと思います。自信満々で自分の考えることがすべてという人は、部下や周りの人の気持ちが分かりにくいのではないでしょうか。

 実は私も今でもそうですが、「どうしてこんなに自信がないんだろう」と思います。おそらくどこまでいっても自信はつかない。ここまでやったら完璧だろうと思えるかといえば、そんなことはなく、自信のなさが付きまとう。

 私は「ちゅうちょして何が悪い」と思っています。自己肯定感が低くてもいい。ポストに就いたら職務は全うできます。ですから、「管理職を打診されたら自信がなくても受けなさい」ということですね。「ちゅうちょせずに受けなさい。ちゅうちょするのは受けてからでもいい」と私は思います。

文/長坂邦宏 写真/木村輝