チームに任せられるリーダーに成長

井上 子育てで早く帰宅しなければならないのに、「どうやって結果を残せばいいんだ!」と焦ることも多々ありました。しかし、すべて自分がやらねばならないと思い込んでいた私に、メンバーは「代わりにやっておくので、大丈夫です」と声をかけてくれたことが、仕事への向き合い方を大きく見直すきっかけとなりました。

 メンバーが自然にサポートしてくれたことに感謝しかありませんし、その気持ちを言葉にして伝えるようになりました。

―― 自分ひとりだけで頑張る段階が終わったのですね。両立させるための時間制限が功を奏して、「チームに任せられるリーダー」に変身した、と。

井上 はい。この経験があったので、任せられることは人に任せて、私でなければならない場面に全力で向かうようになりました。子どもが病気のときは、自宅からオンラインで会議に出席しながら、仕事にメリハリをつけられるようになったと思います。このとき初めて、「ワンチームで仕事をする」ことの本当の意味が実感できるようになったと思います。

難局で「精いっぱいやる人」を人は応援するものだ

山口 育児や介護、病気で大変な環境の中でも「精いっぱい頑張っているか」どうかが、私は大事だと思います。

日本IBM代表取締役社長山口明夫さん。「つらい局面、難しい環境の中で精いっぱいやっている人を、チームは応援するもの」と語る
日本IBM代表取締役社長山口明夫さん。「つらい局面、難しい環境の中で精いっぱいやっている人を、チームは応援するもの」と語る

 難しい局面になったとき、上手にできるかどうかではなく、「精いっぱいやっている人」を周りは応援するものです。そういう姿勢がすべての流れを変えていく。「力も時間もあるのに、精いっぱいでない人」っていませんか? そういう人って、チームから外れていってしまうものです。井上はいつも「精いっぱい、前向きにやる」。だからチーム全体がついてくるのだと思います。

 これはIBMに根付くチームワークの文化でもあります。グローバルでも同じで、英語が多少できなくても一生懸命な社員は、ネーティブからも認めてもらえるし、助けてもらえます。

井上 本当にそうですね。「事情を抱えている人をチーム全体でカバーする」ということを、当事者として体験したことは、新会社にも生かしていきたいです。