「言葉で分かりやすく伝えられる」のが新リーダーの条件

―― コロナ禍で社会のあり方も、ビジネスのスタイルも大きく変わりました。ポストコロナのビジネスリーダーとして、何が必要になってくると思いますか。

井上 これからはリモートワークが中心になるなど、ニューノーマルな働き方が主流となります。今までは対面でやってきたチームづくりも、オンラインでのやりとりが中心になっていくでしょう。だからこそ、経営トップとして、より密なコミュニケーションを心がけていきたい。そのためにも、「いかに分かりやすく、言葉にして伝えるか」が、一層大事になると思っています。

―― 新社長として、社内外にスピーチする機会も増えますよね。

井上 はい。山口さんの講演の動画を参考に、伝わりやすい話し方を研究しているんです。

―― 何と! 山口社長の話し方で、どんな所が魅力的なのですか?

井上 厳しいことや大変なことも伝えなければならない場面もある中、どんなシーンでも必ず「前向きな解釈、ポジティブな提案」を入れている所です。もう一つ、人への感謝をあえて表現するスタイルもすごく参考になります。

「山口社長の講演の動画なども参考に、伝わりやすい話し方を研究している」という井上さん
「山口社長の講演の動画なども参考に、伝わりやすい話し方を研究している」という井上さん

山口 そんなふうに見られていたとは……(笑)。

 リーダーは、コロナを経験して、変えるべきところもあれば、変えてはいけないこともあるはずです。デジタル変革を進めていくという目的は変わりません。ただ、働き方が変わるのだから、それを実現するためのコミュニケーションの頻度やスタイルは工夫していかなくてはいけないでしょうね。

井上 私だけの発想では限界があるので、より広くいろいろな人の声やアイデアを取り入れながら、「分かりやすく伝える」ことを実践していこうと思います。

社長になり、毎朝ジャケットの胸に社章を

―― 最後に、井上さんが社長に就任してから、新たに始めたことなどがあれば教えてください。

井上 一つは、今までつけていなかった社章をつけるようになったことです。改めて、IBMのロゴや会社のイメージについて意識するようになりましたね。

山口 私も昔はつけていなかったのですが、執行役員時代、IBMの評判が世間で落ちた時期があって、その頃からあえて社章をつけるようにしました。社章をつけることをちゅうちょする気持ちもありましたが、よく考えたら「我々は何も間違ったことをしていないじゃないか」、と。

 IBMが掲げている理念は正しいし、正々堂々と胸を張ってIBMの社員として仕事をすべきです。もっと、みんな自分たちの仕事に自信を持とう、という思いから社章をつけるようになりました。

「自分たちの仕事は間違っていない。その信念と自信を社章に込めてつけています」と山口さん
「自分たちの仕事は間違っていない。その信念と自信を社章に込めてつけています」と山口さん

井上 よく分かります。私も毎朝、社章をつけることで、新しい会社で社長として精いっぱいやろうという気持ちになります。もっと社員が輝いて働ける場をつくって、これまで以上のクオリティーで結果を出すこと。それが今の私の目標です。

インタビュー/羽生祥子(日経xwoman総編集長) 取材・文/工藤千秋 撮影/洞澤佐智子