女性を信頼して能力を発揮してもらう

ステファニー 私の今後の抱負としては、「共感のある社内文化を築くこと」。社員に子どもが生まれ、育休を取ることは素晴らしいことだと皆が思えるようにしたいのです。出産や育休を人生の一部だと捉え、問題なく復職できるようにしたい。そのためにも社内教育をして、男性の育休取得を促進し、女性のためには復職しやすくするためのキャリアパスもつくりたいです。例えば、「働き続けていたならば、達成したであろうポジションに戻す」というような。

 ここで1つ、私が過去の職場で経験したある事例を紹介しましょう。昔、同僚男性と「ある女性を昇進させたい」という話をしていました。そうしたら、彼は「女性を登用するのは難しいですよ。役職は与えても、負荷の高い仕事は与えないようにしましょう」と言ったのです。これは女性に不必要な配慮をした考え方ですよね。女性を昇進させるということは、機会と課題、チャレンジ、全てを与えるということ。そして、その女性を信頼して、能力を発揮してもらうのです。女性だから難しいのではないかという前提は女性の機会を奪うことにつながります。

未達成でも「できているふり」はしない

羽生 社内の反響はいかがですか。

ステファニー ポジティブな反応が多いです。我々が恵まれているのは「非常にオープンな会社である」ということです。まだ十分な結果が出ていなくても、きちんとそれを開示します。「できているふり」はしません。

 問題をオープンにし、会議でのディスカッションなどを通して、社員が意見交換をします。当社では、各種のサステナビリティ関連の社内イベントや会議が毎週のようにあります。そうすると、最初はあまり乗り気でなかった人たちも、どんどんやる気になってきます。みんなで議論して、解決策を見いだしていこうという機運が醸成されています。

羽生 情報開示の先進事例ですね。塚越さんはさまざまな場所で講演されていますが、「他社の先進事例を教えてほしい」と言われませんか。

塚越 言われます。「他社の事例を教えてほしい」という企業はアンテナが立っているということなので、素晴らしいですね。実は先進事例は、検索すると無料でも転がっているものなんです。例えば、厚生労働省の「イクメンプロジェクト」は何年分もの実例があり、ホームページで見られます。ただ、「情報を取りに行こう」というアンテナが立っていないと検索はできませんよね。

「先進事例は、実は無料で転がっている。ただしアンテナが立っていないと検索できない」(塚越さん)
「先進事例は、実は無料で転がっている。ただしアンテナが立っていないと検索できない」(塚越さん)

塚越 ファザーリング・ジャパンのホームページでも「イクボス・ロールモデルインタビュー」として、さまざまなイクボスのインタビューを掲載しています。中には、ある中小企業が25年前に中途採用から新卒採用に変えたところ、「会社が有名じゃないから誰も来なかった」というところからスタートして、経営計画書にワークライフバランスや育休を明記し、職場の環境を改善したら、「驚くほど学生が来るようになった」という事例などが載っています。

 大企業は制度をつくって人が合わせるパターンが多いのですが、中小企業は人に合わせる制度をつくり、人が辞めないよう、その人が活躍できるように制度を変えていく。これはまさに「人的資本」を大事にする考え方です。人を中心に考えると実際に業績も上がるということは、大企業にとっても参考になるはずです。