日本の少子化にも男女差別が関係している
―― 国際通貨基金(IMF)からも、日本は「世界で最も高学歴の専業主婦がいる国」と指摘されています。
出口 高学歴で賢い女性は、ジェンダー・ギャップ指数で121位にランクされるような日本の「ゆがみ」がすぐに分かってしまうんですよ。家事も育児も介護も女性に押しつける、こんな男女差別の激しい社会で仕事まで頑張るのはバカバカしい。これなら稼げる男性をつかまえたほうがラクだ、と。社会の構造的なゆがみがそういう考え方を生み出すのです。
日本の少子化もつまるところ男女差別が原因です。家族愛の正体はオキシトシンというホルモンですが、女性は出産時に、男性は育児を行うことによって分泌されることがわかっています。つまり男性の育児休業を制度化することは、家族を愛する大人の男性の誕生につながるのです。
20世紀のフランスの社会人類学者クロード・レヴィ=ストロースが指摘したように、「社会構造が人間の意識をつくる」のです。社会を変えるためにリーダーが頑張らないと、人間の意識も変わらず、社会はよくならないのです。
出口治明
立命館アジア太平洋大学(APU)学長
立命館アジア太平洋大学(APU)学長

構成/久保田智美(日経xwoman編集部)