速やかにジョブ型雇用への移行を

―― これまでの日本企業は、勤務地や仕事内容を限定せずにポテンシャルで採用し、業務内容は後から決める「メンバーシップ型雇用」が主流でした。しかし新型コロナウイルス感染拡大を機に、雇用条件や仕事内容を明確にして採用する「ジョブ型雇用」の注目度が高まっています。

出口 遅すぎるくらいです。そもそも仕事にはジョブ型しかありえません。プロ野球を見たら分かるでしょう。あなたが野球の監督だったら、名ピッチャーであるダルビッシュ有選手に、「もっと経験を積んだほうがいいから、外野やショートもやってみるか」などといいますか?

 それに、今では日本型といわれるメンバーシップ型雇用ですが、そもそも日本にはそんな概念はなかったんですよ。戦国時代の武将、藤堂高虎は「七度主君を変えねば武士とはいえぬ」と述べました。一人の主君に一生仕えるなんていう考え方はなかった。主君に尽くすという考え方は、実は明治時代につくられた近世武士道の発想なんです。

 メンバーシップ型雇用というのは、人口の増加と高度成長があって初めて成り立つ、特異な慣行です。それも知らずに、「日本人にはメンバーシップ型雇用が向いている」などといって本質的な議論を行わないままでは、何一つ世界は変わらない。そういう当たり前のことを原点から考えることができていないのは、やはり日本のリーダー層に、勉強する時間がないからです。ここにメスを入れていかなくてはなりません。