マイノリティーの学生への支援が課題

藤井 適任を探すのに大変だったということは、ないです。反発も特別なかったと思います(笑)。わりと好意的に受け取っていただきました。

―― 特に印象に残っている反響はありますか?

藤井 就任前の3月に方針を決めたのですが、その段階でメディアに大きく取り上げられたのが印象的でした。大学の執行部の人事がこれだけ注目されることは珍しく、その分、今後しっかりやっていくことが問われると思います。

藤井輝夫さん 東京大学総長/1988年東京大学工学部卒業、90年同大学院工学系研究科修士課程修了、93年同大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。理化学研究所勤務、東京大学生産技術研究所長などを経て、18年から大学執行役・副学長、社会連携本部長を務める。19年に理事・副学長。21年4月から現職。
藤井輝夫さん 東京大学総長/1988年東京大学工学部卒業、90年同大学院工学系研究科修士課程修了、93年同大学院工学系研究科博士課程修了。博士(工学)。理化学研究所勤務、東京大学生産技術研究所長などを経て、18年から大学執行役・副学長、社会連携本部長を務める。19年に理事・副学長。21年4月から現職。

―― 林先生、多様性改革という重責ですが、どのように取り組みますか?

東京大学理事・副学長 林香里さん(以下、林) 女性や障害を持つ人、LGBTQなど多様な性的指向・性自認を持った人など誰もが過ごしやすいインクルーシブなキャンパスになるよう、迅速に整備をしていきたいです。当事者の方にとって、大学生活は「今このとき」しかないわけですから。総長直下の男女共同参画室と、バリアフリー支援室などのほか、グローバルキャンパス推進本部、相談支援研究開発センター、ハラスメント相談所などとも連携し、全体的にダイバーシティを実現するのが私の役割です。

 またこれからは、マイノリティーの学生への支援にも力を入れていきたいです。これまで、男女共同参画というとワークライフバランスや産前産後休暇など、主に職員や教員のためのものと思われてきました。今後は東京大学に学生として通う女性やマイノリティーの方たちにとって、もっと過ごしやすいキャンパスになるよう、支援していきたいと思っています。

林香里さん 東京大学理事・副学長/1987年南山大学外国語学部卒業。95年東京大学大学院社会学研究科修士課程修了。ロイター通信東京支局記者、バンベルク大学客員研究員(フンボルト財団)などを経て、04年4月から東京大学大学院情報学環准教授、09年9月に同教授。19年から同大学総長特任補佐。21年4月から現職。
林香里さん 東京大学理事・副学長/1987年南山大学外国語学部卒業。95年東京大学大学院社会学研究科修士課程修了。ロイター通信東京支局記者、バンベルク大学客員研究員(フンボルト財団)などを経て、04年4月から東京大学大学院情報学環准教授、09年9月に同教授。19年から同大学総長特任補佐。21年4月から現職。

ダイバーシティをテーマに学生と対話

―― 女性の学生への支援とは、具体的にどのようなことを?

 4月に、男女共同参画室の新たな部会として、女性を含めた次世代の学生たちへの包括的な教育やケアを行う「次世代育成部会」の準備組織を作りました。そこでは、女性の学生同士のネットワーク作りや、総長との対話もお願いしています。まだ総長からの正式なイエスはもらっていませんが(笑)。

藤井 「対話」は大きな基本方針として重視しています。今、東京大学の次の6年の構想をつくるべく、職員や学生の皆さんを相手に対話を重ねていて、すでに18回の対話をしました。今度は、ダイバーシティをテーマに対話するのもいいですね

―― 次回のテーマが決まりましたね(笑)。総長と対話するとなると、学生は緊張すると思いますが、具体的にどう進めるのですか。

藤井 今は新型コロナウイルスの影響で、オンラインでの対話を開催しています。Q&A機能などを使って学生から質問してもらい、リアルタイムで答えます。これまで、今後の構想などについていろいろなテーマで対話をしましたが、その中でもやはりダイバーシティに関する意見をもらうことは非常に多いですね。女性の学生や研究者をどうやって増やすか教えてください、など。

―― 一言でまとめるのは難しい問いですね。どう答えるのですか。

藤井 具体的な取り組みはまだ固まっていないが、こういう方向性を考えている、もうすぐ決まるのでまた伝えます、と答えています。実際に近々方向性を固めて、伝えていきたいです。

―― 答えを出すことだけがゴールなのではなく、対話そのものが大事ということですね。まさにインクルーシブな関係といえます。

藤井 はい、こうしたやりとりを通して全体の構想をつくっていく、そのプロセスを大事にしています。すでに出来上がったものを一方的に説明するのではなく、「今こんな感じで検討しています」と伝え、意見を聞きながら進めていく。こうした作業を、4月からもう半年ほど行っています。

―― 半年も! 決まる前の内容を開示するのは、勇気がいることだと思いますが……。

藤井 いいえ、むしろ、決まる前の状態でいろいろ意見を言っていただけると、より選択肢が増えて、幅広い視野で見ることができます。それこそがダイバーシティの1つのメリットです。我々の見方だけで進めるよりも、違った視点を入れて、修正や相談をしながらつくり上げたほうが、より共感性が高い解が得られ、アウトプットの質も高まるはずです。