まず男性から発言してしまう

―― 藤井総長と林理事がこれまで教壇に立ってきたご経験から、東大で感じる「ジェンダーの壁」のようなものはありますか。

 授業で「意見はありませんか?」と聞くと、まず男性から話すことが多いように思います。意見を出すリーダーが男性になり、女性は意見を持っていても、後発になりがちです。授業ではそのバランスに配慮しながら指名しますが、やはり教室内では男性のほうがマジョリティーだし、発言することに慣れていると感じます。もちろん元気な女性の学生もいますが。

藤井 私の専門分野は工学(応用マイクロ流体システム)ですが、研究室の中で、留学生を除くと女性の数は少ないです。東大工学系の学部生の女性比率は約1割です。一方、私の研究室はフランスの研究機関と組んでいるのですが、フランスから来るエンジニアは3割くらいが女性です。

―― 現在、学生の女性比率はどのくらいでしょう。

「理事の半分を女性にするなどの結果だけでなく、そのプロセスも大事ですね」(羽生)
「理事の半分を女性にするなどの結果だけでなく、そのプロセスも大事ですね」(羽生)

 2021年の学部入学者に占める女性の比率は21%でした。修士課程になると海外から女性の留学生が増えるので、女性比率は25%に上がりますが、留学生を除くと女性比率は学部と変わらない状況です。

―― 留学生の存在が大きいのですね。東京大学といえば、2019年入学式での上野千鶴子名誉教授によるスピーチが広く知られています。女性の東大生は東大に行っていると言えない、「東京の大学に行っている」と答える、という話もありました。今、学生の意識は、当時から変わっているでしょうか?

藤井 当事者の意識というよりも、周囲が持っているバイアスによる影響が大きいのかもしれませんね。

 「東大と女性」という結びつきが、これまできちんと議論されてこなかったように感じています。「東大と男性」の関係は、ほぼすべてポジティブです。官公庁や大企業に就職できる、出世頭、モテる……。東大の男性たちは全部「持ってる」わけです。