ダイバーシティ推進を現場に丸投げ

―― 次の質問です。「経営トップが、外向けには社内のダイバーシティ推進を進めると言っている。ただ、実際は担当者に丸投げで、あまり積極的ではない様子です。担当者としてはどのように頑張ればよいでしょうか」とあります。

佐久間 丸投げされたら、自分が経営者だと思って思う通りにやればいいのではないでしょうか。任されたと判断して、自分の理想を追求してみていただけたらと思います。

「異質」を排除するという考え方をなくしたい

―― 次です。お二人への質問です。「会社のジェンダーギャップ解消に取り組む個人的な信念や理由、もしくは社会はこうあるべきだというお考えがあればお聞かせください」とのことです。

石渡 男性・女性の問題ではなく、例えば外国人だったり、障害を持っている方だったり、いろいろな多様性を認める社会になっていかなくてはいけないと思います。もはや女性や男性に特化している場合ではなく、日本社会でそうした偏りや偏見がなくなればいいなと思います。

 コロナ禍でいじめなどもあると聞いていますが、異質なものを排除するという考え方がどこか日本社会には根強くあるような気がしていて、そこがなくなればもっとワクワクと仕事をしやすかったり、生きがいを持ちながら働きやすい社会ができたりしていくのではないかと思います。

日本の企業社会は「変わっている」

佐久間 私の妻が働いていた教員の世界は男女平等が実現されているように感じます。私の親戚にも中学校の校長をやっている女性がいます。

 また、私はIRやお客様との面会で海外に行ったときに、いろいろな場を視察するようにしているのですが、見聞を広げるほど「日本の企業社会はかなり変わっている」と感じるようになりました。

 例えばスウェーデンで政策を担っている方は皆さん女性でした。フィンランドで国の教育制度について話してくれた方も女性でした。

 タイに行ったときは社員の子どもたちが学校が終わると職場に来て、お母さんやお父さんの仕事が終わるまでずっと待っていました。学校が夏休みの間は、子どもたちは職場で過ごし、社員が子どもたちの宿題を見るという姿に驚きました。

 その影響もあり、コロナ禍の休校を受け、お子さんの預け先に困った保護者に対して、当行では「子連れ出勤」を認めました。親が作った時間割に沿って、お子さんは会議室や食堂などできちんと過ごしていましたよ。その様子がテレビでも取り上げられましたが、こんなふうに社会を柔軟に変えていかないといけないと思います。

 私がいつも思っていることがあります。「年齢や性別にかかわらず、みんながいつも幸せな生活を送れるような社会にしないといけない」。企業に滅私奉公するような風潮は徐々に減ってきてはいますが、そうした働き方はどんどんやめて、変わっていかなくてはいけないと思います。

―― 20代でも、30代でも、40代でも、人生のどの日を取っても、人は幸せでいなければいけない――。とても強いメッセージをありがとうございます。

若手には伸び伸びと働いてほしい

―― 最後に学生の方からです。「来春、社会に出る学生です。前回のジェンダーギャップ会議にも参加しました。男女格差が大きい日本で、こんな自分が働けるか、不安で仕方がないです。若手社員としてダイバーシティ経営を進めていくには、どのような心持ち、意識が必要でしょうか」という質問です。

 石渡さんは後輩の若手女性を育成する活動もされているとのことですが、いかがでしょうか?

石渡 気張ることなく自分らしくやっていくのが一番だと思います。今の学生さんの、社会に貢献する思いや平等に関する思いは、恐らく昭和の時代よりもはるかに進んでいるのではないでしょうか。そうした人たちが増えていくことで、日本が少しずつ変わっていくので、そういう役割も持っているという気概を持って世の中に出て、堂々とやられたらよいのではないかなと私は思います。

佐久間 石渡さんがおっしゃった通り、今の若い人は、古い世代と比べれば男女格差をあまり感じずにきているのではないでしょうか。会社も少しずつ変わっていきますから、性別に関係なく伸び伸びと仕事をしていただけたらと思います。

―― 学生さんも参加してくれているのは、とてもうれしいですね。皆様、本当にありがとうございました。

右から、花王執行役員 石渡明美さん、千葉銀行取締役頭取 佐久間英利さん、日経xwoman総編集長 羽生祥子

構成・文/小田舞子(日経xwoman編集部) 写真/木村 輝