女性活躍推進の捉え方 日本と世界で大きなギャップ

「多様性を重視し、実現するために取り組みを行うというのは、世界からすれば常識ですが、日本ではまだそうした認識が弱いのです」(石塚由紀夫さん)
「多様性を重視し、実現するために取り組みを行うというのは、世界からすれば常識ですが、日本ではまだそうした認識が弱いのです」(石塚由紀夫さん)

羽生 石塚さんは、最近の日本企業において、D&Iに関する取り組みの切り口が変化していると感じているそうですね。

石塚 まず、注目したいのは世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数です。日本は相変わらず低く120位。特に経済と政治分野における順位の低さが目立っています。それなのに、2013年から女性活躍推進と言われ始めて7~8年たった今、「もう(女性活躍推進)ブームは終わったよね」と言い出している人が、一般社員レベルの中に結構います

 現実を見るとグローバルな状況は変化を遂げています。2021年6月にコーポレートガバナンス・コード(CGC)が改定されました。CGCとは、企業が持続的に成長し、健全な経営を続けていくために守るべきことをまとめたものです。その中で、多様性を実現しなくてはいけないということが明記されています。この改定で、各企業に対して、「女性活躍推進をどう進めるのかという情報を公開しなさい」という項目が盛り込まれました。

 改定案を検討した公的な場で、参加したICGN(世界で54兆米ドルの資産を運用する)CEOのケリー・ワリング氏が、「ダイバーシティ実現は企業価値向上に欠かせない。いつまでに何をどうやって達成するのか、計画・目標・期限も明示させるべきだ」と、情報公開だけでは不十分だとする趣旨の発言をしました。

女性登用のポイントは1人ではなく、複数入れること

石塚 しかしながら、日本でも少しずつ前進はしています。好事例としてSOMPOホールディングスを紹介します。同社は今年、CGCに沿うかたちで女性活躍推進の取り組みを見直しています。中でも私が注目しているのが「サクセッションプラン」です。これは次世代の経営者を育てていくための計画を指します。

 同社はグループ全体81のポストについて、5年以内に就くであろう人材を5人以上、10年以内に就くであろう人材を5人以上、つまり合計10人以上、全体81のポストを合計すると810人以上の社員をリストアップして育成するという方針を打ち出しました。しかも、その3割以上を女性にするとしています。5人のうちの3割以上ですから、1つのポストに必ず2人は女性候補を入れなければいけません。5人中、女性が1人というのではいけないのです。1人だと、その女性社員を個人としてというよりも「女性だから」という変な色眼鏡で評価する可能性があります。女性を複数入れることが、リーダー育成では重要になってきます。

羽生 候補者リストに女性を入れるということをリーダーが全部署で考えていく、ということですね。

多様な人材が入ると、多様な意見が出る そこからがスタート

石塚 2021年の春、オリンピック・パラリンピック関連のある男性リーダーが「女性が入っている会議は長くなる」といった趣旨の女性蔑視発言をしたことで辞職に追い込まれました。あの発言には、日本社会における多様性への理解の薄さが表れていると思います。

 多様な人材が入ることによって多様な意見が出るのは当然の結果です。その意見をもむことで、最適、最善な決断ができるというのが多様性の本質です。それをあの男性は分かっていなかったのでしょう。もちろん分かっている経営者もいます。その1人がソニー創業者・井深大氏です。井深さんは「常識と非常識がぶつかったときに、イノベーションが生まれる」という言葉を残しています。

羽生 ぶつかるわけですから、現場は大変になるかもしれません。でも、それこそがD&Iの真骨頂だというわけですね。

石塚 衝突を恐れていたら、何も生まれません。多様な意見が出にくい組織にまず必要なのは、自由な意見を発言できる心理的安全性の確保です。そして、アイデアの衝突を恐れないこと。D&Iが実を結ぶためにはそうしたことが必要です。

構成/小田舞子(日経xwoman)