2021年9月17日に行われた、日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト「ジェンダーギャップ会議」の様子をお伝えします。パネルディスカッション「本気の多様性確保に向けて、グローバル先進企業の挑戦」のパネリストには、日興アセットマネジメント常務執行役員・ステファニー・ドゥルーズさん、日本コカ・コーラ ジャパン&コリアオペレーティングユニット 人事本部長・パトリック・ジョーダンさん、日本経済新聞社編集委員・石塚由紀夫を迎え、日経xwoman編集委員・羽生祥子がコーディネーターを務めました。

(上)コカ・コーラ&日興アセットマネジメントの女性活躍推進
(下)取締役に女性を入れるだけでは会社は何も変わらない ←今回はここ

グローバル企業幹部から見た日本企業の課題

「日本では従来の性別役割分業が強く、女性は『子育て・家事・仕事』という3つのことをやらなくてはいけない場合が多い」と指摘する日興アセットマネジメントのステファニー・ドゥルーズさん
「日本では従来の性別役割分業が強く、女性は『子育て・家事・仕事』という3つのことをやらなくてはいけない場合が多い」と指摘する日興アセットマネジメントのステファニー・ドゥルーズさん

日経xwoman編集委員 羽生祥子(以後、羽生) パネリストのお二人は海外から来日して、海外との、文化や企業の風土の違いを感じたのではないかと思います。そうした経験を踏まえ、日本の組織が抱える問題点や解決するアイデアがあればお聞きしたいです。

日興アセットマネジメント常務執行役員 ステファニー・ドゥルーズさん(以後、ステファニー) 私が来日してから、かなりの年月がたちますが、いまだに様々な課題を感じることがあります。例えば英国と比べてみましょう。日本と英国では同じ課題もあります。例えば、金融業界にはまだ女性が入ることのできない「メンズクラブ」的な社会があるというのは共通の課題です。

 2カ国の違いとしては、育児中社員に対する支援制度が上げられるでしょう。英国では、ある程度の規模の企業であれば、会社ビルの下階にある託児所に子どもを預けて、親は上の階で働ける場合があります。ベビーシッターを雇うことも日本では難しいため、乳飲み子を抱える社員は長期間、仕事を休まなければいけません。また、日本では従来の性別役割分業が強く、女性は「子育て・家事・仕事」という3つのことをやらなくてはいけない場合が多い。そうした環境に置かれている女性を支援するための制度が必要だと思います。託児所の整備やフレックスタイム制度の導入などが必要です。そうしたことを実現するためには抜本的な改革が必要だと考えています。

「日本では、女性に対する家庭における期待値が高いと感じます」(パトリック・ジョーダンさん)
「日本では、女性に対する家庭における期待値が高いと感じます」(パトリック・ジョーダンさん)

羽生 女性社員がキャリアを構築するための環境整備が不足している現状を指摘してもらいました。パトリックさんはいかがでしょうか?

日本コカ・コーラ ジャパン&コリアオペレーティングユニット 人事本部長 パトリック・ジョーダンさん(以後、パトリック) 私が日本に来て気付いたのは、女性が職場において大きな課題に直面しているということです。世界にも似た問題はありますが、日本においては問題がさらに複雑に絡み合っていると感じます。

 まず、女性が家庭内で期待される役割が大きいと感じています。女性が「家庭の核」をなすというイメージです。子どもの世話から学校での役割など、育児に関するさまざまな仕事は主に女性が担うものだという社会からの押しつけがあり、女性自身にも思い込みがあるように思います。海外では女性が自由に生きるための運動が盛んです。女性の社会的地位を高め、男女共同参画の社会を実現するためのNGOや個人、企業が、日本と比べて数多く存在しています。

 以前、日本の女性の一日を描いたYouTube動画を見たことがあります。その女性は早朝に起き、家族の朝食作りに取り掛かります。6時になると子どもを起こして朝ごはんを食べさせます。7時になってやっと夫が起きてくるのですが、彼は家事も育児もせずに一人で出掛けてしまうのです。私はその動画を見てがっかりしました。

 私が育った環境ではこうした光景は見られませんでした。子どもは家族が力を合わせて育てるのが基本です。もちろん西欧ではすべてがうまくいっているというわけではありませんが、性別にかかわらず、家事・育児は皆で手分けして行うものだということを、少なくとも知っている人が多いと思います。子どもを残して、誰か一人が勝手に出掛けてしまうということはあまりありません。その点では、日本には根深い問題があると思います。

 私は日本に来て2年目になりますが、世界で一番いいところは日本だと感じるほど、この国になじんでいますし、愛着も感じています。

 当社にはブランドマネジャーとして働く女性で、2人の子どもを持つ人がいます。彼女の能力の高さを評価して、「カテゴリーマネジャーになってみないか」と、非常に重要な意思決定をする立場への昇進を打診しました。すると彼女に「(昇進を)15年ほど待ってもらえませんか」と言われたのです。西欧で考えれば15年は長すぎます。「なぜ15年なのでしょう」と尋ねると、「今はまだ子どもが小さいのです。会社は支援してくれないでしょうし」と言われて驚きました。

 コカ・コーラでは日本は(オペレーティングユニットに含まれている)韓国と協働することになりました。韓国も非常に保守的な国ですが、(韓国のコカ・コーラ社内の)女性管理職比率は50%に達しています。韓国においても当社は女性リーダーを増やすという方針を掲げています。女性がコーチになって後進を育成するというプロジェクトも行っています。こうした社員同士が共に学習するプロジェクトを実施した結果、女性社員はトップからメッセージが来るのを待つのではなく、自分たちから変化を求めるようになってきます。重要なのはこうしたボトムアップの動きであり、トップダウンだけではいけません。

羽生 家庭内の教育が、子どものダイバーシティ概念に影響を及ぼす側面がありますが、ステファニーさんはどう考えますか?

ステファニー 家庭の影響は非常に大きいと思います。子どものときからダイバーシティの概念をしっかり教える必要があります。性別役割分業やジェンダーに関する固定観念を持たないように育てることで、従来とは違う価値観を持った大人が育ち、ステレオタイプを打破することにつながります。