子育てを最優先、プロジェクトリーダーのオファーをいったんは断る

――課長の時に、2012年3月から1年間産休・育休を取ったんですね。

田中 出産したのが2012年4月で、課長になって5年目でした。夜中にシステム障害が起きれば呼び出されるので、さすがに出産の3カ月前ぐらいになって、このまま仕事を続けていくのは厳しいかもしれないと思い、上司と相談して、部下のいない調査役になりました。周りから「何があったの?」と心配されましたが、私自身は、子どもとの時間を大切にしていくと決めていました。キャリアについては、いったん諦めたという感じです。

 育休から復帰後は、調査役という役職のまま、各部署の業務改善、ITを活用した効率化のためのソリューションの提案や導入支援を行っていました。

――復帰後は時短勤務だったのですか。

田中 はい。子どもは1人と決め、時短勤務をして、一度しかない育児を満喫しようと思っていました。勤務は9時半から4時半までで、1時間の時短です。仕事を終えてから、子どもを迎えに行き、子どもと食事をして寝かしつけるという毎日でした。

 時短勤務を小学校6年生になるまで取得できる制度があったので、それをしっかりと取ろうと思っていました。ですが、子どもが3歳の時に、私にとって大きな転機がありました。お客様の契約を管理する契約管理企画部で、お客様のロイヤルティー(サービスやブランドに対する信頼、愛着)向上を目指す全社プロジェクトを立ち上げることになり、「リーダーとして参加してほしい」と、プロジェクトの担当役員から声をかけてもらったのです。

 とはいえ、自分が最優先するのは子ども。子どもが急に熱を出したら休まなければいけないし、大事なときに仲間に迷惑をかけてしまうという思いが強く、いったんは断りましたが、部門の統括担当役員から「子どもを持つ女性でも活躍できるような組織、会社にしていきたい。全力でサポートするのでぜひチャレンジしてほしい」と言っていただき、夫にも背中を押されたため、挑戦することに決めました。いまだに飲み会に行くと、「1回断ったんだよな」とその時の担当役員にからかわれることがあります(笑)。一度辞退したにもかかわらず、チャレンジを後押ししてくれた会社の姿勢には今でも感謝しています。

――時短勤務しながら、プロジェクトリーダーを務めたのですね。プロジェクトリーダーと子育ての両立をどう乗り越えましたか。

田中 仕事の優先順位、やること・やらないことを決め、限られた時間でパフォーマンスを最大限発揮するようにしました。何より、チームのメンバー全員に助けてもらいました。

「時短勤務中のプロジェクトリーダーのオファーをいったんは断りました。いまだに飲み会に行くと、『1回断ったんだよな』とその時の担当役員にからかわれることがあります」
「時短勤務中のプロジェクトリーダーのオファーをいったんは断りました。いまだに飲み会に行くと、『1回断ったんだよな』とその時の担当役員にからかわれることがあります」