資産運用業界には女性活躍についての課題がある

ファシリテーター 羽生祥子(以下、羽生) ここからは、各社における多様性推進の「壁」や今重点的に取り組んでいることについて、お話を聞いていきます。まず、日興アセットマネジメントのステファニー・ドゥルーズさん。海外出身であり、3人の子の母親であり、金融業界の運用会社でトップを務めているステファニーさんは、まさに多様性を体現した存在だと思います。社長として今一番力を入れている取り組みを教えてください。

日興アセットマネジメント 代表取締役社長 ステファニー・ドゥルーズさん(以下、ドゥルーズ) 資産運用業界には女性(の登用)に関して深刻な課題があります。これは日本に限ったことではなく、以前働いていたイギリスでも同様で、女性が男性と同等に扱われていると胸を張れる状態には至っていません。私たちは企業に投資する前に、その企業のD&Iや行動様式を評価しますが、私たち自身が、企業が達成すべき基準を満たしていないのだとしたら、この矛盾は是正しなくてはなりません。

「女性が男性と同等に扱われていると胸を張れる状態には至っていません」(ドゥルーズさん)
「女性が男性と同等に扱われていると胸を張れる状態には至っていません」(ドゥルーズさん)

ドゥルーズ 施策で改善できるものもありますが、女性が直面する課題の多くは文化的なものです。例えば、「会社のデスクにいなければならない」という考え方。「グループシンク(集団浅慮)」も課題です。自分の意見に賛同してくれる人ばかりに囲まれていたほうが心地いいのですが、同質性が高まることで合理的な判断ができなくなり、違う考えを持った人にとっては排除されたように感じてしまいます。小さなことですが、女性が(早退して)子どもを迎えに行くとき、周りの目が気になってしまうのもその一つです。

 ですから私たちは、トップダウンで施策に取り組み、ボトムアップで女性を支援する必要があります。トップダウンで改善できるものの一つが、採用基準の検討です。ポートフォリオマネージャー(運用責任者)になるには、キャリアが1年でも途切れてはいけないのでしょうか。MBAを持っていることがいいマネージャーの条件だと、誰が言ったのでしょうか。採用基準の多くは、女性が満たすには難しく、実際には業務に無関係なものもあります。

 日本には素晴らしい男性育休制度がありますが、あまり使われていません。トップダウンは素晴らしく、ボトムアップはそうではないという例ですね。私たちが2030年までに女性管理職30%という目標を達成するためにも、トップダウンとボトムアップの両輪が必要です。これらがなければ女性が業界に入るのは本当に厳しく、私はこの状況を変えたいのです。

羽生 女性のポートフォリオマネージャーが少ない一方で、ファンドの運用においては、ポートフォリオマネージャーが男性のチームより、女性のチームのほうがよいパフォーマンスを出しているというデータがありますよね。

ドゥルーズ そのようなデータはあります。 10~20年ほどの期間でパフォーマンスを見たデータだそうです。女性はリスク分析・評価を丁寧に行う傾向があるそうです。とても興味深いことです。