女性が参加した和平合意は15年持続率が35%上がる
私たちはこうした緊急支援と同時に、「争いが起きる前に防げる社会」をつくり、「女性自身を平和の担い手」として育成しています。最近の研究では、「女性が参加した和平合意は15年以上持続する割合が35%上がる」と分かっています。
なぜ女性が参画することで上がるかというと、女性は社会が不安定になったり、戦争になったりしたときに、あらゆるしわ寄せを受け被害に遭いやすい。そのため被害者の視点で「社会の変革のために何が必要か」、そして子どもとの結びつきという観点から「この和平プロセスは本当に次世代を安全に導くものなのか」と考えられるからです。ただ、実際に女性が世界の和平プロセスに参加したのは過去19年間でたったの9%。しかも、その参加が単なるお飾り、数合わせ、男性や他者の傀儡(かいらい)のような形だと「逆に成功率が下がる」といった調査結果も出ています。
これは日本のジェンダーの施策にも共通するところがあり、既視感を覚える人もいるのではないでしょうか。

テロリストから息子を取り戻した母も
紛争の最前線で活動していると、何の後ろ盾もない女性が平和のために立ち上がる姿も多く目にします。例えば、アフガニスタンでは女性活動家たちが殺害されるリスクを冒してでも、女子教育の権利を訴えてデモをしています。しかし、開始5分でタリバンが発砲し、仲間の女性が3人亡くなりました。「なんて自分たちは無力なんだろう。情けない」と嘆いていましたが、彼女たちは十分にやるべきことはやっている。いえ、やるべき以上のことをやっているわけです。
また、ソマリアのテロリストから自分たちの子どもを取り戻した母親たちもいます。地元の100人の母親が本当に丸腰の状態でテロ組織の訓練場に入り、自分たちの息子を取り戻そうとしました。殴る蹴るの暴行を受けたのですが、それを見た息子たちは「安易な気持ちでテロ組織に参加したけれども、何の罪もない母親たちに暴力をふるう教えが正しいわけはない」と感じ、テロ組織を脱退して帰ってきました。
この話はサクセスストーリーとして語られ、ロールモデルとしてブレークスルーのきっかけにもなりますが、同時に限界もあります。