「女性だから」というだけでは連帯感は生まれない
一方、「単に女性だから」というだけでは連帯が生まれない場合もあります。私たちは女性であると同時に、家族構成、社会的階級、人種といったさまざまな属性やアイデンティティーを抱えています。「女性」という属性だけ切り取って共感を押し付けられると、それはそれで違和感や拒否感が出てしまう。まずは「この社会をどう変えていくか」という無理なく共感できる大目標を設定することが大事です。
日本で「平和」というと、すごくきれいな言葉ですが、現場では本当に人々の血と汗と涙を積み重ねてでき上がっている。そして壊れるときは本当に一瞬だと感じています。残念ながらたった1人でできることには、限界があります。英雄の到来を待っていても、残念ながら1人の英雄が変えられる世の中ではありません。連帯、連携できるレベルで、個人やグループコミュニティ、政策などがさまざまなレベルで波及効果を生み、学び合いながら変わっていく社会になればと考えています。
瀬谷ルミ子(せや・るみこ)
中央大学総合政策学部卒。英国ブラッドフォード大学で紛争解決学修士号を取得。過去にルワンダ、アフガニスタン、シエラレオネなどで国連PKO職員、外交官、NGO職員として勤務。専門は紛争地の平和構築、治安改善、兵士の武装解除・動員解除・社会復帰。現在はREALsでアフガニスタン、ケニア、南スーダン、ソマリア、トルコ、シリアで紛争とテロの予防事業、女性を紛争解決の担い手として育成する事業、緊急支援などに携わる。The New York Times「世界に影響を与えた10人の女性」(2022年)などに選出。著書に『職業は武装解除』(朝日新聞出版)がある。