2022年9月16日に行われた日経ウーマンエンパワーメントプロジェクト「ジェンダーギャップ会議」から、NPO法人REALs理事長・瀬谷ルミ子さんの基調講演をお届けします。紛争やテロ予防のために紛争地で「平和の担い手」を育成してきた現場での経験から、「男女の違い」や「ジェンダー」を課題解決につなげるために必要なことを語りました。

「男性が大変か」「女性が大変か」で判断すると分断を生む

「女性を、平和の担い手に~紛争最前線からのメッセージ」というテーマで講演した、NPO法人REALs理事長・瀬谷ルミ子さん
「女性を、平和の担い手に~紛争最前線からのメッセージ」というテーマで講演した、NPO法人REALs理事長・瀬谷ルミ子さん

 私は過去20年以上、紛争地域で国連PKO職員、外交官、民間の支援団体という立場で「争いの予防」と「平和を築く取り組み」を続けてきました。その中から、今日は紛争と平和、そしてジェンダーギャップについてお話しします。

 REALsはアフリカや中東、アジアを中心に活動しています。争いが起きてから復興するのではなく、「争いが起きる前に防ぐ」。人々の命が失われ、憎しみの連鎖が続くことをできる限り未然に防ごうとしています。

 また、ウクライナやアフガニスタンなどの現在ある危機に対しても現実的な行動を起こし、ジェンダーに関する取り組みにも力を入れています。一般的に紛争と平和の観点でジェンダーを語ると、男性は戦闘部隊の構成員であり、加害者。女性は暴力や性的な被害者というイメージだと思います。確かにその通りなのですが、男性は戦闘員として参加するから、死亡する割合も高い。「男性と女性、どちらが大変なのか」という物差しで比較すると、戦争と平和に限らず、ほかの社会課題も分断が生まれてしまう、と実感しています。

 ただ、今も世界では「女性である」という理由だけで、命を狙われる危険があります。例えば、昨年の8月、武装勢力タリバンによってアフガニスタン政府は事実上、崩壊しました。現地の女性活動家たちから「このままでは殺されてしまう。世界のいろんな人に助けを求めたけれども、誰も反応してくれない」という声を受け、退避支援を開始しました。本来は国家単位で行う取り組みですが、国が動くのを待っていては、間に合わない。日々、人々が殺されている状況でした。

 そんな中で「女性がスポーツをしてはいけない」「女性が働いてはいけない」「女性が学校に行ってはいけない」「女性として意見を発信してはいけない」と、それまでのアフガニスタンでは当たり前だった権利をタリバンに奪われ、多くの女性が命を奪われました。

 例えば、ある女性ジャーナリストはタリバンから拘束され、性的暴行を受けて道に置き去りにされ、「次にその顔を見せたら、今度は家族もろとも殺害する」と警告を受けました。ただ、幸いなことにこの女性はヨーロッパの国に難民として受け入れられました。アフガニスタンでREALsは今年の9月までで246人の退避支援を進めることができました。