男性の家事育児が想定されていない

羽生 実は、「NIKKEI違和刊」にも「男性トイレにオムツ替えシートがない」という意見が載っています。オムツは男女どちらが替えてもいいのですが、やはり女性がやるものというイメージがあるのかもしれません。

 家事や育児については「女性に負担が偏っている」と捉えられがちですが、一方で、家事育児をしている男性が社会で想定されておらず、選択肢が少ないという問題もあります。ジェンダーギャップによる男性側の生きづらさと女性側の生きづらさは、対立ではなく、セットだと感じています。

 ほかにも、私が募集した意見の中には、「女の子だからと言われ続けて得意になった家事や片付け。それ自体は好きだけど、『得意だから任せるね』と言われると『もともと得意だったわけじゃないよ』と、モヤる」という声も。

 職場でも子育て中の女性にだけ、「お子さんがいるから帰ってもいいよ」とか「あまり責任の重い仕事をお願いしたら負担になっちゃうかな」と勝手に配慮される。それなら子育て中の男性にもそうした配慮が必要ですし、逆に女性でバリバリ仕事をしたい人もいれば、パートナーが子どもの面倒を見てくれる家庭もある。個別のケースに合わせて対話をしていくことが大事だと思います。

「ジェンダーギャップによる男性側の生きづらさと女性側の生きづらさは、対立ではなく、セットだと感じています」(辻さん)
「ジェンダーギャップによる男性側の生きづらさと女性側の生きづらさは、対立ではなく、セットだと感じています」(辻さん)

羽生 「女の子だからと言われ続けて、それが得意になった」というのがキーワードですね。もちろん生まれもっての得意・不得意もあるけれど、育ってきた環境や社会からの期待、プレッシャーなど後天的なものによって変わっていく部分も大きいといわれています。

性別が逆だったら起こらなかったこと

 管理職に就く女性が増える中、「女性のほうが稼ぎが多いと気まずくなるシーンが多い」というコメントもありました。パートナー同士では納得し合っているのに、世間がステレオタイプの価値観を向けてきて、お互いに気まずくなってしまう。

羽生 辻さんにも、そのようなご経験が?

 あります(笑)。レストランで彼に伝票を渡されたので「今日は私が」と伝えたら、店員さんにびっくりされたことや、板前さんが彼にだけ名刺を渡したこともありました。また、私は自分で会社を運営しているのですが、仕事が大好きでこういう生き方を選択しているだけで、パートナーのキャリアや人生の価値観は当然それぞれですし、お互いの納得の元で支え合える関係がベストだと思っています。それでも、相手が「男なんだから自分がリードしなきゃ」と自分で自分にプレッシャーをかけて、私のキャリアとつい比較してしまう、というようなこともありました。

 でもこれって、性別が逆だったら起こらなかったこと。男性だから、女性だからではなく「あなたはどう?」とその都度2人で対話し、応援し合うことが大事だと実感しています。パートナーシップというと、2人のことと捉えられがちですが、「1人と1人で一緒にいる」という感覚を大切にしています。そう考えることで、相手のことも尊重できると思います。