「男子は後から伸びる」は本当か

四本 教育界では最近、都立高校入試における男女別定員(男子と女子で合格基準点が異なり、女子のほうが高い高校が多かった。2021年度から段階的に廃止)が問題視されました。これに関してはさまざまな「正当化説」を耳にしました。その1つが「男子は後から学力が伸びる」というものです。

 私が調べたところ、確かに、体の成熟は女子のほうがやや早く、男子のほうがやや遅い傾向があります。それに伴って脳が成長する時期も平均的には男子のほうが遅いのですが、最終的な学力とは関係ないし、それこそ個人差が大きい。女子の教育機会を奪っておきながら「男子が後で伸びる」とは、支離滅裂です。

 男女の平均値の違いにとらわれて、その下に広がっている多様な個人差に目を向けず、「女性だからあなたはこれが得意」「男性だからこう」と性別で分けるのは、非生産的な方法だと思います。能力のある人が、その能力を発揮できるチャンスの芽を摘んでしまっているからです。性別ではなく個人を見て、「本当に適性のある人」を取りこぼしていないかどうか、きちんと見る必要があるのではないでしょうか。

―― 次回、ジェンダーギャップと男女の能力差の関係について、詳しく聞いていきます。

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取材・文/久保田智美(日経xwoman編集部) 写真/鈴木愛子

【参考文献】
*1:De Lacoste-Utamsing C, Holloway RL “Sexual Dimorphism in the Human Corpus Callosum” 1982;Science 216(4553):1431-2.
*2:Haas R, et al. “Female hunters of the early Americas” 2020;Science Advances 6(45).
*3:Mehl MR, Vazire S, Ramírez-Esparza N, Slatcher R, Pennebaker JW “Are Women Really More Talkative Than Men?” 2007;Science 317(5834):82.
*4:Joel D, et al. “Sex beyond the genitalia: The human brain mosaic” 2015;Proceedings of the National Academy of Sciences 112(50):201509654.