女性管理職約40%を達成した「2つのルール」

羽生 コカ・コーラさんでは、DEIに対してどのように取り組まれていますか。

田中 コカ・コーラは全世界のおよそ200以上の市場でビジネスを展開しています。すなわち人種、国籍、性別を問わずさまざまな方がいる、言い換えると、「最も多様性に富んだ消費者の皆様に愛されている」といっても過言ではないかもしれません。それと同時に製品を提供する私たちもまた同様に多様でなければ、市場や消費者の真のニーズを理解し、満たすことはできないのではないか。そのためコカ・コーラではDEIを企業のDNAの一部として考えています。

「製品を提供する私たちが多様でなければ、市場や消費者の真のニーズを理解し、満たすことはできないと考えました」(田中さん)
「製品を提供する私たちが多様でなければ、市場や消費者の真のニーズを理解し、満たすことはできないと考えました」(田中さん)

田中 歴史をさかのぼると、コカ・コーラでは1935年に大企業で初めて女性取締役を登用しました。それから60年代には、雇用差別禁止法にいち早く賛同を表明。また2021年、日本のコカ・コーラのグループ各社では「同性婚に対応した就業規則の改訂」を行いました。

日本コカ・コーラの登壇資料より
日本コカ・コーラの登壇資料より

田中 そして本日の本題である「女性活躍」にフォーカスすると、コカ・コーラは全世界で「30年までに女性の管理職をおよそ50%に高める」と目標を掲げています。日本においてはもっと前倒しをしようということで、5年前倒しした25年に50%の目標を達成しよう、と非常に野心的な目標を掲げています

羽生 進捗はいかがですか。

田中 実は現状、あと少しのところまできています。18年の女性管理職比率は15%ほどでしたが、21年12月の時点で約40%になりました。この種明かしをしますと、実は21年初頭に大がかりな組織変更があり、これに伴って部署や役割の新設、組織の統廃合が起きました。このときに新しいポジションへの応募者を採用する際に「2つのルール」を設けたのです。

 1つは「候補者の中に必ず女性を入れること」。もう1つは「面接官3人のうち必ず1人は女性にすること」。この2つのルールによって、面接される側、面接する側のダイバーシティを確保し、バイアスがない形で採用を進めました。結果的に昇進した人の男女比率を見ると、男性44%に対し、女性56%。当社社員の男女比率はほぼ半々か男性が少し多いぐらいですので、それだけ女性が優秀だと実感できたことはとても喜ばしいことです。

羽生 「リーダー候補に女性を入れる」のは実行している企業もあると聞きますが、選ぶ側の面接官にも女性を入れると。確かにそうした視点が必要ですし、実際に効果が上がっているのは素晴らしいですね。


 下編に続きます。

文/三浦香代子