「男女間の賃金格差解消のための取り組みがない」企業は60.6%

羽生 ここで、人的資本の観点から、私たちの「日経WOMAN 企業の女性活用度調査2022年版」を紹介させてください。この調査で「正社員で、男女間の賃金格差是正のための具体的な取り組みや仕組みはありますか」と聞いたところ、「ない」と答えた企業が60.6%でした。

 さらに、OECD(経済協力開発機構)が発表している「高等教育を受けた人の経済的リターン」の国際比較をみると、日本の女性はOECD諸国で最下位です。日本コカ・コーラでは、男女間の賃金格差の解消に向けて、どのような取り組みを行っていますか。

日経WOMAN「女性活用度調査2022」は、2022年1~2月に、上場企業など4400社を対象に実施。535社から回答を得た。男女間賃金格差解消への取り組みについて聞いた質問では、回答企業の60.6%が「取り組みがない」と回答した
日経WOMAN「女性活用度調査2022」は、2022年1~2月に、上場企業など4400社を対象に実施。535社から回答を得た。男女間賃金格差解消への取り組みについて聞いた質問では、回答企業の60.6%が「取り組みがない」と回答した

田中 「同一労働同一賃金」を徹底しています。性別、人種、民族にかかわらず、公平な報酬を担保する。しかし実態が乖離(かいり)しているということは多々ありますので、米国では中立性のある第三者機関による分析調査、監査を行っています。

 国によって物価などが違うので、「日本とアメリカの給与が同じか」といった比較はできませんが、同一マーケットで同一の労働をしている人に対しては、同一の賃金を支給できるように努めています。

羽生 メットライフ生命ではどのように取り組んでいますか。

向井 当社の給与体系は職種およびグレード別になっているので、同グレードにおける男女間の格差はありません。ただ、社員の男女比率は女性が56.7%なのに対し、女性役員は26.5%、女性管理職は20.6%。日本コカ・コーラさんの目指す50%と比べると先が長いですが、女性管理職の比率を上げることに注力しようと考えています。

 そのためにも「ワーキングマザーは仕事と家庭の両立が難しい」「家事は母親がメインでやらなければいけない」といったアンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)をなくさなくてはいけません