資生堂の事業分割により、シャンプーなどのパーソナルケアブランドを継承し、2021年7月に誕生したのがファイントゥデイ(23年1月1日に「ファイントゥデイ資生堂」から社名変更)。大企業とスタートアップの特徴を併せ持つ会社だ。日本とアジアの11カ国・地域に拠点を構え、日本と海外の従業員はほぼ同数。資生堂出身者に加え多くの社員が外部から入社し、女性社員の比率も4割以上と多様性を体現しているのも特徴だ。執行役員人事本部長の石井早苗さんに、DE&I(多様性、公平性、包括性)の考え方や組織・人財方針について話を聞いた。(聞き手は平田昌信・日経xwomanプロデューサー)

ファイントゥデイ執行役員人事本部長の石井早苗さん
ファイントゥデイ執行役員人事本部長の石井早苗さん

年2回の社員満足度サーベイ、結果は全て開示

――ファイントゥデイの概要を教えてください。

石井早苗さん(以下、石井) 資生堂グループのファイントイレタリー事業、いわゆるパーソナルケア部門を継承する形で、2021年7月に始動しました。主力商品はfino(フィーノ)、SENKA(センカ)、TSUBAKI、uno(ウーノ)、エージーデオ24、HADASUI、シーブリーズといったヘアケア・ボディケア・スキンケア商品です。事業拠点は日本、中国、APAC(アジア太平洋)の11カ国・地域にあり、現在は日本に約400人、中国やAPACに500人超で、トータルで1000人くらいの社員がいます。

 23年には資生堂の久喜工場とベトナム工場がファイントゥデイグループに移り、研究所も創設する予定で、マーケティングと開発から製造・販売までを一気通貫で行えるようになります。IT(情報技術)システムや人事制度も、資生堂の仕組みをベースとし、当社独自の制度やルールを加えようとしています。

 将来的にIPO(新規株式公開)を予定していますが、これは一つの通過点で、独立した会社の成人式のようなものと思っています。アジアのパーソナルケア分野でリーダーポジションを狙う。これが、IPO後の目標です。

――かなり特徴のある会社ですね。

石井 一般的なスタートアップ企業の場合は、製造や文化の醸成などをゼロから始めますが、当社は資生堂の文化や高い品質、安全衛生を守った製造などがベースにあります。その上で、パーソナルケア商品に特化した新しい会社なので、迅速に動くことができますし、アントレプレナー(起業家)的なことができるのは、あまり他の会社にはない特徴だと思います。

 資生堂の良いところと、外部から来た人たちによる小さい会社を大きくしようとするエネルギーやパワーがちょうどいい形で融合していることも特徴です。経営陣も、資生堂出身者と、外部から来たそれぞれの分野でたけたプロフェッショナルが半々で良いバランスになっています。

 資生堂の文化と外部から来た人の文化を良い意味で一つにしていく、一つの色ではなく多様性を保ったモザイクのような状態でより強くしていく。これを実現しなければならないと思っています。そのためには、透明性高く議論することが必要です。実際、社内では、意見をきちんと述べた上で、モザイクのような意見が一つの方向性に合意していくということを繰り返しています。この点は、当社のカルチャーとして根付いています。

――意見をきちんと述べるためには心理的安全性も重要ですね。

石井 その通りです。社員が仕事に熱中できるために重要なのは、「心理的安全性」と「やりがい」だと思っています。この2つがないと社員がエンゲージしているとは言えません。

 これらの指標を含む社員のエンゲージメントを測るために、年に2回、社員満足度サーベイを実施して、結果は全部開示しています。こうすることで、指標が悪いときに現場のマネージャーがすぐに手を打てるようにしています。

――採用は経験者採用が中心でしょうか。

石井 はい。特にITや経営管理、人事などのバックオフィス機能は、経験者を採用していますが、新卒採用も行っています。22年の4月には、新卒で3人採用しました。採用は、障がい者雇用も含めてダイバーシティ採用を行っています。ポジションに必要であれば男性でも女性でも障がいを持っていても、分け隔てなく採用します。

――DE&I(多様性、公平性、包括性)の考え方を教えてください。