第3部 SDGsアクションは企業価値の向上につながる
第3部では、「SDGsアクションにつなげる!~先進企業の事業共創~」というテーマでパネルディスカッションを開催。保育および介護事業、再生可能エネルギーによる電力の小売業、証券会社、そして総合商社が取り組むそれぞれの先進的な試みについて、4人のパネラーから日経xwoman編集員・羽生祥子が話を聞いた。
村松 尚子 氏 UPDATER(旧みんな電力) 新事業推進部
山口 学 氏 SMBC日興証券 名古屋プライベート・バンキング部 コンプライアンスオフィサー
増田 一男 氏 三菱商事中部支社 食品・コンシューマー産業部長
コーディネーター:羽生 祥子 日経xwoman 編集委員
介護施設に保育施設を併設、女性の離職率が減少
羽生 第3部では、ご自身の会社で社業に貢献しながらもプレイヤーとしてSDGsへの取り組みでどんなアクションにつなげたか。そんなお話を伺っていきたいと思います。

キートの白瀧征人さん(以下、白瀧) 2017年からグラミン日本準備機構に携わり、2018年からはグラミン日本の理事として主に名古屋を拠点に活動しております。社業(キート)では名古屋市内で介護事業、保育事業、障がい者支援事業所を運営しています。1階に保育園、2階と3階に有料老人ホームをつくり、名古屋市内では民間として初めてこうした複合施設を立ち上げました。我々の業界は8割ぐらいを女性が占めていますが、離職率が高い。その理由は出産と育児です。保育園付きの施設にしたことで離職は減りましたし、パートでしか働けなかったシングルマザーの方が正社員にキャリアアップする事例も増えています。
UPDATER(旧みんな電力)の村松尚子さん(以下、村松) 「みんな電力」というブランド名で、電力の生産者が分かる「顔の見える電力」を提供しています。日本全国の再生可能エネルギー事業者と直接契約していますので、再エネ利用率は国内トップクラスです。世界で初めて商用化した電力のトレーサビリティ(生産履歴の追跡)も特徴です。ブロックチェーン技術を使って、どの発電所からどれだけ供給されているかを30分単位で可視化しています。
社長の大石英司は、「みんなが自由に電力という富を作り出し、みんなが好きな電力を選ぶ社会を作りたい。そうすれば、独占されていた富が分散化され結果的に、貧困のない社会になる」という思いで、「みんな電力」を創業しました。グラミン日本と、貧困問題の解決を目指す「グラミンでんき」という共同プロジェクトを開始したのは、自然な流れだと思っています。

SMBC日興証券の山口学さん(以下、山口) 当社は「プロボノワーク」という制度を導入しています。この制度を利用して、グラミン日本に参加しています。プロボノワークとは、仕事で培ったスキルや知識を生かして社会貢献をするというものです。当社の場合は業務時間の20%まで社会貢献活動に使っていいことになっています。グラミン日本には8人のチームで参加しており、グラミン日本の支援対象者向けのオンラインワークショップを担当しています。
三菱商事の増田一男さん(以下、増田) 三菱商事は、企業理念「三綱領」に基づき、公のために資する仕事をする、豊かな社会の実現に努力することを企業の存在意義として掲げています。これを実現するために、パートナーシップを組む皆様とビジネスの中でイノベーションを起こしながら、事業共創を展開しています。