毎月100円をグラミン日本に寄付する個人向け電力サービス
羽生 実際の取り組み内容についてお話しください。
白瀧 グラミン日本名古屋支部として、グラミンローン活用に向けて活動を行っています。その一例なのですが、弊社の保育園で子どもたちに英会話を教えているのはフィリピンから来られた女性です。この方が名古屋で初めてグラミンローンを活用され、英会話教室を準備する資金に充てました。日本語も堪能で介護士の資格を取られていますので、弊社に正規雇用で入っていただきました。もともとは英会話教室や小中学校で教えていたのですが雇い止めに遭い、その後、物流センターで安い給料で働いていました。現在は弊社の施設で介護補助をしながら併設する保育園で英会話を教え、2倍近くの給与で雇用させていただいています。
羽生 介護産業にとって明るくパワーと可能性のあるお話ですね。村松さん、「グラミンでんき」のお話を具体的にご紹介いただけますか。

村松 「グラミンでんき」には、ご家庭向けと法人向けがあります。ご家庭向けはグラミンでんきに切り替えていただくだけで毎月100円がグラミン日本に寄付される仕組みになっています。グラミン日本の支援を受けている方がご契約した場合は1年間、電気代が無料となり、電気代の心配なく新しいチャレンジができるようになります。
法人向けは、太陽光発電所からの電力使用量に応じて応援金がグラミン日本に届けられます。キートにもこのプランでご提供させていただく予定です。
プロボノでグラミン日本のオンラインワークショップ・説明会を実施
羽生 山口さんは、プロボノとしてどんな活動をされているのですか。
山口 SMBC日興証券の「プロボノワーク」制度は2020年3月にスタートしました。延べ6団体10プロジェクトに90人以上が参加しています。各団体のキャパシティビルディング(組織的な能力の向上)を後押しして、社会や経済に貢献することを目指しています。グラミン日本に関しては、1期のメンバーは業務を見える化し、より効率的に前進できる体制づくりや、事業報告書の作成を行いました。
私は2期目から参加していて、シングルマザーの方々に第一歩を踏み出してもらい、スモールビジネスやプチ起業を始めて経済的に自立してもらうことを目指したワークショップを運営しています。現行のワークショップがスタートしたのは3月くらいですが、これまで23回開催し、124人の方々に参加していただいています。
本業以外に社員参加型の社会貢献活動も社内へ浸透

羽生 個人としてSDGsというキーワードのもとにアクションを起こすためのアドバイスをいただけますか。
増田 本業の中でSDGsに取り組むことが重要と考えていますが、三菱商事では、本業以外でも社会貢献活動を行っています。例えば、インクルーシブ社会(多様な人々を受け入れる社会)の実現のために「母と子の自然教室」ではシングルマザーのご家庭をお呼びしながら社員と一緒にキャンプを行っています。この取り組みはもう50年近く行っていて、1700人あまりのお母様、お子様が参加され、累積で1000人の社員が参加しています。そうした社員参加型によって社会貢献活動を会社の中に浸透させていくことも大切かなと思っています。
山口 社会課題解決に対する様々な団体の取り組みは非常に尊いと思っています。ですが、いかんせん人が足りません。そこを補えるのは企業の力じゃないかと思います。プロボノで様々なリソースを持ち寄ればすごい力になり、解決へ向けた第一歩となります。多くの企業に、プロボノやSDGsに向けた取り組みを進めてほしいと思います。
参加する個人、そして会社へのメリットもあります。私自身、成長を実感し日々充実していますし、たくさんのメンバーから「視野が広がった」などポジティブな話を聞きます。彼らの上司も「プロボノに送り出してよかった」と口をそろえて言います。社員のメリット、企業のメリットもあり、企業のブランド、付加価値が高まります。人が育つということはそれ自体が企業価値の向上ではないかと思っています。
羽生 最後に白瀧さんからもアドバイスをお願いいたします。
白瀧 我々のような中小企業でも、企業利益の追求と社会貢献の両立は大切になっていきます。今回紹介させていただいたシングルマザーや外国人の雇用は、人手不足に悩んでいる我々の業界にとって、ひとつの可能性を示唆していると思います。これからどんどん労働人口が減り、雇用の多様化が進むすべての企業にとって、SDGs実現のための社会貢献活動を行って企業価値を高めていくことが大切だと思います。

文/長坂邦宏