女性の活躍する場が広がり、生き方や働き方も多様化してきました。そんな忙しい毎日から、女性ならではの気になる体の悩みや不安を「どうにもならないもの」と諦めていませんか? 女性のウエルネス課題をテクノロジーで解決する「フェムテック」が注目されている今、女性が自分の健康と向き合うためのきっかけや考え方について、デリケートゾーンのトラブルのお話を中心に、産婦人科医の吉形玲美さんと、フェムテックのリーディングカンパニーであるfermata(フェルマータ)のCCO中村寛子さんの対談でひも解いていきます。

「恥ずかしいこと」とタブー視してきたデリケートゾーンの話

 女性にとっての月経やおりものの不調は、「いつものこと」「我慢しないと仕事が進まない」という考え方が未だに根強くあります。月経不順やPMSを改善するため、低用量ピルでホルモンをコントロールすることは浸透してきましたが、以前は避妊薬のイメージが強く、若い女性が服用することに抵抗感を持つ人も少なくありませんでした。それと同様に、女性はデリケートゾーンの悩みを抱えていても、なんとなくタブー視しがちです。

吉形玲美さん(以下、吉形) 十人十色と言われるデリケートゾーンのトラブルですが、年齢やライフステージ、性交経験などによってやはりある程度悩みが分類されてきます。

<b>吉形玲美</b>(よしかた・れみ)さん<br> 医学博士 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医<br> 医療法人社団ミッドタウンクリニック特別顧問(女性医療研究主幹) <br> 医療法人社団進興会特別顧問 浜松町ハマサイトクリニック婦人科医師 <br> 東京女子医科大学病院産婦人科非常勤講師<br> 女性医療、更年期医療に注力し、ゆらぎやすい女性のホルモンマネジメントを得意とする。40代以降の女性の健康の鍵を握る成分として注目される「エクオール」においては、世の中に広く認知される以前からその臨床研究をリードしており、更年期医療に注力している
吉形玲美(よしかた・れみ)さん
医学博士 日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
医療法人社団ミッドタウンクリニック特別顧問(女性医療研究主幹)
医療法人社団進興会特別顧問 浜松町ハマサイトクリニック婦人科医師
東京女子医科大学病院産婦人科非常勤講師
女性医療、更年期医療に注力し、ゆらぎやすい女性のホルモンマネジメントを得意とする。40代以降の女性の健康の鍵を握る成分として注目される「エクオール」においては、世の中に広く認知される以前からその臨床研究をリードしており、更年期医療に注力している

中村寛子さん(以下、中村) 私は若い頃、ニオイが気になっていました。自分の体臭なのか、おりもの自体が臭うのか、分からないまま誰にも相談できずにいました。また、年齢を重ねて30代になると、乾燥やかゆみなど悩みも変化してきました。

<b>中村寛子</b>(なかむら・ひろこ)さん<br> fermata inc. CCO<br> 一般消費者向けのフェムテックイベント開催や商品の販売、企業に向けたコンサルティングなど、未だタブー視される傾向にある「女性のウェルネス」課題を解決・支援する事業を幅広く手がけ、国内のフェムテック先進企業として注目されている「fermata(フェルマータ)」の代表取締役兼共同創業者。コミュニティ運営やイベントを統括
中村寛子(なかむら・ひろこ)さん
fermata inc. CCO
一般消費者向けのフェムテックイベント開催や商品の販売、企業に向けたコンサルティングなど、未だタブー視される傾向にある「女性のウェルネス」課題を解決・支援する事業を幅広く手がけ、国内のフェムテック先進企業として注目されている「fermata(フェルマータ)」の代表取締役兼共同創業者。コミュニティ運営やイベントを統括

吉形 思春期はおりものの量が多い傾向にあります。そこにホルモンの影響で分泌が増えるアポクリン汗腺の汗も加わって臭う可能性もあります。ただし、アポクリン汗腺は脇や外陰部に分布しているので、そもそもおりものが臭っているわけではないのかもしれません。おりものは弱酸性ですので、やや酸っぱい臭いはあります。

中村 若い時は原因が分からないまま、とにかくニオイ対策をしていましたね。20代や妊娠中はどのようなトラブルが多いのでしょうか。

吉形 20代になると性交経験のある方も増え、なかには性病などでおりものの状態が変化したり、かゆみが伴ったり、外陰部に痛みが生じるなど、いろいろなトラブルが出てきます。

そして、妊娠中の方は、エストロゲン分泌量が増えるので、おりものの量が増えたり、免疫力の変化でカンジダ腟炎になりやすくなったりします。また、妊娠すると常在菌でもあるB群溶連菌(GBS)の検査をします。これは、成人には強い影響はないのですが、新生児が産道を通る時にB群溶連菌に感染してしまうと肺炎や髄膜炎を起こすことがあるからです。

中村 安産できるような体力づくりは考えますが、産道の環境についてまで気が回らないですね。

吉形 赤ちゃんが産道を通る時に、これから生きるために必要な腟内や腸内の菌をお母さんからもらって出てくるのです。素晴らしいですよね。しかし、まさかその瞬間に一部の菌は感染症として悪影響を与えるかもしれないということまではなかなか考えられませんよね。今後の人生で自然分娩の可能性がある方には、子宮、腟の環境にも気を使っていただければと思います。