消化器内視鏡で世界トップシェアを持ち、医療事業が売上高の85%を占めるオリンパス。40もの国や拠点で活動する「グローバル・メドテック(メディカルテクノロジー)カンパニー」を目指す同社で、マネジャーやエキスパートと呼ばれる管理職として活躍する3人の女性社員に、海外駐在経験や管理職登用といったキャリアの軌跡、グローバルな職場環境、管理職としての働きがい、プライベートとの両立などを語っていただきました。

子どもの体調不良時はサポートし合い「長く働くのが当たり前」に

 大学では農学部で遺伝子や微生物の研究に携わり、人の役に立つ医療分野の仕事を希望して入社した小林麻理子さん。2007年の入社から15年間、消化器内視鏡の安全性を評価する仕事に携わっています。

小林麻理子(こばやし・まりこ)さん<br>R&D機能 リプロセス評価 評価4 マネジャー<br>農学部卒。2007年入社、CDS技術開発部配属。2015年リプロセス評価部に異動。2020年マネジャーに昇進。小3、年長の2人の男の子の母
小林麻理子(こばやし・まりこ)さん
R&D機能 リプロセス評価 評価4 マネジャー
農学部卒。2007年入社、CDS技術開発部配属。2015年リプロセス評価部に異動。2020年マネジャーに昇進。小3、年長の2人の男の子の母

 内視鏡は繰り返し使う機器なので、使うたびに洗浄や消毒などの「リプロセス作業」を行います。マニュアル通りの作業後、その国の安全基準を満たすかどうかを検証するのが小林さんの業務です。「コロナ以前から感染症が注目されていることに加え、時代の変化とともに、より強い菌も登場しています。そのため世界中で規制がどんどん厳しくなる傾向にあり、試験方法も常にアップデートが必要です。国によって法規制や使える薬剤も異なるので、ここ数年は業務の幅がより広く、深くなってきています」と小林さんは話します。

 生物学専攻者は比較的女性が多いこともあり、小林さんがマネジャーとして統括する「評価4」グループも37人中女性が28人と7割以上を占めています。「内視鏡は手荒く扱うと壊れやすい繊細な機器ですし、安全性試験は集中力を要する細かい作業なので、女性に合っていると感じます。子育てをしながら働く女性も多く、入社当初から長く働くことが自然とイメージできました」。

 小林さんも出産・復帰後の大変な時期に、働きやすさを実感する場面がたくさんありました。「1人目の育休から復帰したとき夫は単身赴任中。私ひとりで家事・育児をこなしていて、本当に大変な日々でした。でもワーキングマザーの先輩がおり、直属の上司も育児両立に理解があったので、『復帰後しばらくは、子どもの急な体調不良で思うように働けないのは当たり前』と、業務量を調整してくれました。また『試験など出社が必要な日でも、お子さんが病気になったら代わってあげる。そのために常に資料を整理し、交代してもらうときはすぐ他のメンバーに頼めるように準備しておいて』と、実効的なアドバイスもありました」。

 「おかげで心の準備もできましたし、子どもが病気になったときは先輩や後輩に仕事を代わってもらったこともあります。あのとき諦めずに仕事を続けられたのは、上司やメンバーのサポートやフォローがあったから。この職場でなければ、辞めていたかもしれません」と小林さんは振り返ります。

「消毒試験は消毒作業後の微生物の数を確認して安全性を検証します」と小林さん。マネジャーになった現在は全体の把握や技術獲得を推進しています
「消毒試験は消毒作業後の微生物の数を確認して安全性を検証します」と小林さん。マネジャーになった現在は全体の把握や技術獲得を推進しています

マネジャーに昇進後、緊急事態宣言が発出され、波乱の船出に

 着実にキャリアを積み重ねてきた小林さんに、マネジャーの内示が出たのは2020年1月でした。「年齢的にはまだ早いですし、ずっと技術畑で働くイメージを持っていたので、思わず『拒否権はありますか?』と聞いてしまいました」と小林さんは当時の心境を打ち明けます。

 でも「小林さんが入社した当時に比べて人数が増え、組織が大きくなった。若い感覚を生かして、部署をどんどん改革してほしい」という上司の言葉に背中を押されて、マネジャー職を引き受けました。ところが4月からの着任直前にコロナ感染拡大で緊急事態宣言が発出され、波乱の船出となりました。

 「重要なテーマを複数抱えていましたし、試験など出社しないとできない仕事も多い。さらに私も含め子どもが休校になったメンバーもいて、厳しい状況でした」。でも、と小林さんは続けます。「それまでも急な休みに備えて準備し、困った時は積極的に助け合っていたので、大変な局面でも乗り切ることができました」。日ごろからサポートし合うシステムが構築されていたからこそ、業務を止めずに済んだのです。

 マネジャーの内示のとき、「私より向いている人がいるはず」と、固辞することも考えたという小林さん。今は業務改善などを推進しつつ、部内のコミュニケーション活性化や部下の育成にも積極的に取り組んでいます。「私も若い時から重要な仕事を任せてもらい楽しさを体感したので、部下にも能力より少し上の仕事を任せています。メンバーが仕事は楽しいと思えるように的確にフォローしながら、能力を発揮できる環境を作るのが管理職の仕事。マネジメントって面白いですね」と、管理職の醍醐味を感じています。技術職やマネジャー職という枠にこだわらず、「会社の期待以上のアウトプットを出せる社員でいたい」と今後の抱負を語ってくれました。