世界180カ国、1000以上のネットワークで利用される世界有数プロバイダーの日本支社として1992年に設立されたエリクソン・ジャパン。今回は同社で管理職としてチームをまとめる2人の女性が登場する。興味深いのは、2人がともに、かつては子育てをメインとした比較的「守りの働き方」を志向していた点。エリクソン・ジャパンのやる気を育むカルチャーとは?

デジタルサービス・ジャパン総括本部でプロジェクトマネジメントオフィス本部長を務める上坂佳菜さん。アプリケーション開発やネットワークシステムの運用・構築・展開などのさまざまなプロジェクトの成功率を高めて、ビジネス価値の最大化を目指す部署を統率しながら、全社的に掲げる女性人材の採用、女性管理職の増加を目指すD&I活動も積極的に行っている。上坂さんは二児の母であり、次男が小学校に入学した年から4年間、毎月北京に出張する生活を送っていたこともあったという。どうやって仕事と子育てを両立しながら、キャリアを築いてきたのか。そのエッセンスを聞いた。

「やってみようよ」の一言が大きなモチベーションに

1997年に新卒で日系商社に就職し、一般事務に就いた上坂さん。「たまたま上司がアメリカ帰りの自由な方で、入社1年目の私にも自由に仕事をさせてくださったんです」。まず思いついたのは、顧客管理のオンライン化だった。当時は出始めたたばかりのサービスで、上坂さんはITに詳しいわけではなかったが、パソコン入門書を片手に奮闘。完成したシステムは、営業スタッフからリアルタイムで顧客情報を取り出せて便利になったと言われるなど、多くの社員に喜ばれたという。

<b>上坂佳菜(こうさか・かな)</b>さん<br>デジタルサービス・ジャパン総括本部でプロジェクトマネジメントオフィス本部長
上坂佳菜(こうさか・かな)さん
デジタルサービス・ジャパン総括本部でプロジェクトマネジメントオフィス本部長

「この成功体験で仕事の面白さを知り、もっとできることはないかな、と思うようになりました。ただ、一般事務という枠の中でできることは顧客管理のオンライン化がチャレンジできる上限。それならほかの業務ができる会社に転職しようと思い、2000年2月にエリクソン・ジャパンに入りました。採用面接では、正直に経験値が低いことを言いました。期待に応えられなかったら大変ですので。でも、採用人事は『やる気があるなら、あとはやってみるだけ。やってみようよ!』と。その言葉に、大きなモチベーションをもらいましたね」

あとあと、「やってみようよ!」というのはエリクソンの社風だと知った。基本的に、考え方が間違っていなければ信じてやらせてくれる。もしチャレンジに失敗しても減点しないのも特徴。できたことを加点してくれるおかげで、チャレンジしやすい雰囲気が保たれているという。制度面でも「TASTE Ericsson」というプログラムがあり、これは現在の自分の職務を超えて社内で一定期間新しいチャレンジに取り組むことができるもの。一定の条件 を満たすことで、2週間から2カ月まで、自分の希望する別の部署やチーム、ポジションでの業務や働き方、課題などを直接体験できるという。自身のスキル開発、オープンなポジションへの応募、キャリアの再検討など、社員が次の行動を決定する前に事実を知ることができる絶好の機会として実際に活用するエンジニアもいるとのことだ。

その雰囲気に後押しされるように、上坂さんは入社翌年から約2年間、バックオフィス業務をまとめる管理職に就いた。部下は全員年上で約30人。「入社翌年の20代半ばの私に管理職をアサインするのがエリクソンだと思います」と上坂さん。色んな人に相談して、支配型のリーダーではなく、スタッフに対して適切なフォローを行い、力を最大限発揮できるように導くことを目指した。信念は、会社のコアバリューに基づき、人と良好な関係を築き情熱を持ちリードを取り影響力を与えられるオーセンティック・リーダーシップであるという。