生理を取り巻く社会の空気は変わりつつある

 「令和になってようやく、女性が自分の生理についてオープンに話せる社会になり始めたと感じています」と話すのは、産婦人科医の宋美玄さん。

宋 美玄(そん みひょん)さん●産婦人科専門医・医学博士・FMF認定超音波医。周産期医療、女性医療に従事する傍ら、テレビ、インターネット、雑誌、書籍で情報発信を行う。産婦人科医の視点から社会問題の解決、ヘルスリテラシーの向上を目的とし活動中
宋 美玄(そん みひょん)さん●産婦人科専門医・医学博士・FMF認定超音波医。周産期医療、女性医療に従事する傍ら、テレビ、インターネット、雑誌、書籍で情報発信を行う。産婦人科医の視点から社会問題の解決、ヘルスリテラシーの向上を目的とし活動中

 「働く女性が、妊娠、出産、更年期などのライフステージ変化のたびに、労働市場から見放されてしまうような風潮がずっと続いてきました。この状況を社会課題としてとらえ、盛んに情報発信が行われるようになってようやく風向きが変わってきたように思います」(宋さん)

 生理痛をはじめとする月経随伴症状(月経前や月経中の不快な症状の総称)による労働損失の大きさ(下グラフ参照)などにも、世の中が注目するようになってきています。

■月経随伴症状による労働損失は年間4911億円
■月経随伴症状による労働損失は年間4911億円
15~49歳の女性2万1477人を対象にインターネット調査を実施。月経随伴症状に関連する心身的・経済的負担について評価。欠勤、作業量・作業時間の低下、作業効率の低下などから損失額を試算した。
出典: J Med Econ 2013; 16(11): 1255-1266を基に作成。

 働く側は生理痛があっても生理休暇を申請しにくい、雇用する側は生理についての理解が足りないなど、生理というテーマを共有するのは難しい状況がずっと続いてきました。「しかし、例えばこのようにお金に換算すると“共通言語”になり、個人的な問題から企業の課題として認識されやすくなります」(宋さん)

生理の回数が増えたことによってリスクも

 そもそも現代女性の生理の回数は江戸時代ごろの女性に比べて9~10倍と多くなり、当然、体への負担も増えていると宋さんは指摘します。

 「女性の体は受精卵が着床するために子宮内膜を厚くして準備を整えていますが、妊娠しなければ毎月リセットする必要があります。その際に不要になった子宮内膜が出血を伴ってはがれ落ち、体外に排出される、これが生理の主なメカニズムです。このときに増加する“プロスタグランジン”という物質は、子宮を収縮させ、血液などを押し出す働きを担っています。ところがプロスタグランジンが過剰に作られると子宮の収縮が激しくなり、生理痛を引き起こす原因となります」

生理痛のメカニズム
生理痛のメカニズム
(イメージ図)

 「昔は多産であったため、生理のない期間が今よりずっと長くありました。栄養状態のよい現代では初潮年齢が早まる一方、初産年齢は高くなり、出産回数も大きく減りました。このため生理の回数が増え、痛みに悩まされるケースや回数が増大するわけです。あわせて、子宮内膜症のリスクも高まっています」

 子宮内膜症とは、生理の際に不要な子宮内膜が排出されきらず、卵巣や子宮のまわりにとどまったり、周囲の組織と癒着を起こしたりし、子宮以外の場所で痛みをもたらすもの。不妊につながる恐れもあります。

 「ただの生理痛と思っていても、実はそこに子宮内膜症が潜んでいるかもしれません。長年痛みをただ我慢し続け仕事を頑張って、いざ子どもが欲しいというときには子宮内膜症由来の不妊になってしまっていた、という事態は避けたいですよね。病気の早期発見のためにも、生理痛を軽んじず、医療機関を受診することが大切です」