40半ば頃からは、自身のキャリアを振り返り、より自分らしい人生について考える女性も多いようです。そんな方々に注目してほしいのが、地方移住による新たなキャリアの可能性です。地方都市移住に詳しいフィンウェル研究所の野尻哲史さん、そして、経営者として地方で自分らしい働き方をかなえた丹後佳代さんに、地方を選択することで広がるセカンドキャリアについて聞きました。

地方移住で幸せなセカンドキャリアを歩む人が増えている

<b>野尻哲史(のじり・さとし)</b>さん<br> エコノミスト・フィンウェル研究所代表<br> 1959年生まれ、岐阜県出身。一橋大学卒業後、国内外の証券会社調査部、資産運用会社などに勤務。定年を機に合同会社フィンウェル研究所設立。資産の取り崩し方、地方都市移住など、退職後の生活に関する提言を行っている。行動経済学会・日本FP学会・日本アナリスト協会検定会員。『老後難民 50代夫婦の生き残り術』(講談社+α新書)など著書多数
野尻哲史(のじり・さとし)さん
エコノミスト・フィンウェル研究所代表
1959年生まれ、岐阜県出身。一橋大学卒業後、国内外の証券会社調査部、資産運用会社などに勤務。定年を機に合同会社フィンウェル研究所設立。資産の取り崩し方、地方都市移住など、退職後の生活に関する提言を行っている。行動経済学会・日本FP学会・日本アナリスト協会検定会員。『老後難民 50代夫婦の生き残り術』(講談社+α新書)など著書多数

「セカンドキャリア」とは、以前は定年退職後に従事する職業という意味で使われた言葉でした。しかし、人生100年時代を迎え、終身雇用も主流ではなくなった現代では、将来を見据えて早めにキャリアアップしたり、新たな職業に転身するという意味を含むようになりました。

 40代を中心とした働く女性の中には、これからの人生をより充実したものにしたいと考え、新たな環境に飛び込むことを検討する人も多いのではないでしょうか。

 地方都市移住などの研究を行うフィンウェル研究所の野尻哲史さんは、「セカンドキャリアを含め、退職後の人生について考えている人ほど、地方への移住を考える傾向にあります」と指摘します。そうした背景にあるのは、老後に備えて考えるべき最重要課題であるマネープランでしょう。野尻さんが提唱している退職後に使える金額の計算式は下記の通りですが、現役時代の勤労収入や運用資産が少ないようであれば、老後の生活資金も心細いものになることが一目瞭然です。


【現役時代の資産形成等式】
勤労収入=生活費+退職後の生活のための資産形成
【退職後の生活資産等式】
生活費=年金収入+勤労収入+(蓄えてきた資産を取り崩す)資産収入


 このことから見えてくるのは一般的に、定年退職後は現役時代よりも支出を減らす必要があるということ。「そこで注目されているのが地方移住です。例えば、住まい。道府県庁所在都市の住居は都心とほぼ同等の物件でも、家賃は2分の1というケースもあります。定年退職後のみならず、将来に向けてキャリアチェンジするために移住する人も年々増えてきています」と野尻さん。

 フィンウェル研究所が2022年に行った「60代6000人アンケート」によると、実際に移住した440人のうち、4分の3の人が「移住して良かった」と回答しています。そして良かったと評価した理由(複数回答可)は、「生活費の削減が可能になった」(42.8%)が最も多いという結果に。一方で、「思ったほどよくなかった」と評価した理由も「生活コストが思ったほど下がらなかった」(42.5%)が最多でした。「このことからも、移住の満足度が生活コストの削減に直結していることが分かりました」(野尻さん)

「自然に恵まれた人口30万~100万人の地方都市などでは、新鮮で滋味豊かな食材が安価で手に入ります。地方移住によって生活水準を下げずに支出を減らすことが可能になるのは非常に魅力的です」と野尻さん
「自然に恵まれた人口30万~100万人の地方都市などでは、新鮮で滋味豊かな食材が安価で手に入ります。地方移住によって生活水準を下げずに支出を減らすことが可能になるのは非常に魅力的です」と野尻さん

 地方移住によって生活費が抑えられた余裕資金で、月に1度は都心のコンサートや観劇に出かけたり、やはり都心で友人と会食をしたり……と、以前のライフスタイルを楽しんでいる人もいるようです。