チームに正直に話し、柔軟に対応することの大切さ

―― 乙黒さんはお子さんを育ててこられ、現在はシニアディレクターとして活躍されています。育児とキャリアの両立で何か工夫してきたことはありますか。

乙黒 子どもたちは今年4月に大学3年、高校3年、中学3年になりました。小さい頃はその時その時で必死でしたが、今振り返るといい思い出です。子供たちが小さい頃は1時間の時短勤務を取って保育園の送り迎えをしたり、途中からできたフレックスタイムや半休の制度を使って病院へ行ったり、学校の行事に出席できたりして、社内制度をいろいろ活用し、仕事とプライベートの両立をしてきました。

 フレックスタイムや半休は、今は自分のために使っていますが、今後は母親のことが心配なりますね。こうした制度は、育児だけでなく、社員全員が活用できるものだと思います。

 在宅勤務は今標準になりましたが、昔はパソコンを持ち帰り、子供を寝かしつけてから残った仕事をやるといった活用の仕方をしていました。リーダーというポジションになってグローバルの会議も結構多く、私がどういうふうに働いているのか、在宅で仕事をしていると家族が見て理解してくれています。そういう点では本当にありがたいと思います。

―― いずれ管理職になろうという気持ちはありましたか。

乙黒 正直な気持ちを言うと、管理職になりたいと思っていたわけではないですね。結果的にそういうパスを通り、結果的に今のポジションにいると言ったほうが正しいかと思います。

 自分がリーダーになって思うのは、自分がサポートしてもらったり背中を押してもらったりしたように、今度は自分がサポートする番であり、次の世代にどうつなげていくかを考えていかなければならないということです。それはWLCのテーマの一つかもしれませんね。

―― 日本コカ・コーラの企業風土をお聞かせください。

乙黒 男女関係なく、キャリアアップできる風土だと思います。男女かかわらずリーダーシップ・プログラムに参加させてもらってありがたいと思いましたし、「AccelerateHER」の上司向けコースにも参加しました。

―― リーダーになることに躊躇する女性が多いかと思います。リーダーを目指す働く女性に何かアドバイスをお願いします。

乙黒 女性男性は関係ないかもしれませんが、人それぞれのライフステージがあって、それぞれ事情が異なります。自分がどうしたいかよく考え、その内容を上司や周りの人にちゃんと伝えていくことが大事だと思います。声に出してはじめて人事部としてもサポートできるんじゃないでしょうか。

パトリック 私の個人的な例をお話しします。昨年、アイルランドにいる母が体調を悪くし、私は母の元へ帰らなければなりませんでした。リモートで仕事をすることに不安を感じましたし、8時間の時差で仕事をしなければならなかった。

 柔軟に対応するためには、乙黒さんが言ったように、チームに対してオープンでいなければなりません。チームに事情を正直に話したところ、時間を調整してくれ、私との会議は日本の昼休み、アイルランドでの朝4時に設定してくれました。おかげで、私は真夜中の12時に会議をしなくても済みました。みなさんが柔軟に対応してくれたことで、それを避けることができたのです。

 もう一つ合意してもらったことがあります。私がメールを送り、チームのみなさんが夜中にそれを受け取っても、すぐに返事はしないということです。

 亡くなる1週間前、母が重体だということをチームのみなさんが理解してくれ、「仕事をしなくていいよ」と言ってくれたので、私は母と最期の時間を大切に過ごすことができました。それもみんなが柔軟に対応してくれたおかげです。

 正直にチームに話ができなかったらどうなっていたのだろうか。本当に大変だっただろうと思います。それを考えると、子育てしているワーキングマザーの気持ちはどうだろうかと思いました。やはり、柔軟に対応すること、そしてそれができる環境が重要だと思います。

文/長坂邦宏、写真/木村輝

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