4月から不妊治療の保険適用が始まり、不妊治療への関心が高まっています。そこで日経BP総合研究所は、プレナタルサプリメント「エレビット」と共催で「妊活オンラインセミナー 保険適用が始まった“不妊治療”のギモンにナヲが切り込む!」を開催しました。ご自身も妊活体験者のマキシマム ザ ホルモン ナヲさんが、不妊治療の専門家である医師、森本義晴さんに、不妊治療にまつわるギモンをズバッとぶつけてくれました。
不妊治療に踏み切るタイミングは?
黒住 紗織日経BP総合研究所 上席研究員(以下、黒住) ナヲさんは妊活経験者ですよね。
ナヲ氏(以下、ナヲ) 34歳で長女を出産後、39歳で第2子の妊活を始めることを決意して、ライブ活動を休止しました。妊娠8週目での流産などありましたが、どうにか、41歳直前で次女を出産できました。
黒住 ナヲさんは39歳でお休み宣言をされたんですね。ここで気になるアンケート結果があるので紹介します。日本人の8割が、不妊治療を受けたら40歳以上でも容易に妊娠できると答えているんです。
Q.不妊治療を受けた女性が比較的容易に妊娠できる年齢は何歳ごろまで?
ナヲ 確かに高齢出産は増えましたが、「50歳以上」と回答している人もいるのにはびっくり。最近は、「妊活は40歳過ぎてからでいい」と思っている人が増えているのかもしれません。
森本 義晴さん(以下、森本) 50歳でも、というのはちょっと驚きましたが、40歳というのは想定通りの答えではありますし、ある意味で不妊治療を信頼していただいているのだなと思います。40歳を超えていても絶望する必要は全くありません。ただ、年齢とともに染色体異常の卵子が増加してしまうのは事実です。40歳を超えると妊娠率よりも流産率が上回り、不妊治療の成功率も急激に低下し始めます。
ナヲ どのタイミングで病院へ行けばいいのでしょうか?
森本 日本産科婦人科学会では、不妊症を「1年間一生懸命子作りをしても赤ちゃんができないこと」としています。以前は2年間でしたが、近年短くなりました。40歳を超えている方の場合、半年間頑張っても赤ちゃんができなければ、その時点で不妊治療に踏み切っていただくのをおすすめします。40代の3カ月は、30代の1年に匹敵するほど貴重です。年齢とともに妊娠しにくくなっていくので、少しでも早く治療を開始してほしいですね。
不妊治療の保険適用。範囲はどこまで?
ナヲ この4月1日に始まった保険適用では、どんな不妊治療が対象になりますか。
森本 不妊治療の基本治療がすべて対象です。これは本当に大きな進歩で、この4月を待って来院された患者さんも非常に多いです。
これまでの不妊治療は、基本的に「全額自己負担+特定不妊治療費助成金」で賄うしかなかったのです。大きな経済的負担を抱え、海外旅行やマイホームをあきらめて治療を続ける、という方も多くいらっしゃいました。ですから、今回の保険適用開始は大きな出来事です。
森本 不妊治療は大きく、より自然な妊娠に近い「一般不妊治療」と、高度な技術を用いる「生殖補助医療」に分けられます。
「一般不妊治療」はタイミング法と人工授精のことを指します。タイミング法は、排卵に合わせて夫婦生活を持つことですね。
ナヲ タイミング法でも病院に行ったほうがいいのですか? 近頃ごろは排卵検査薬も市販されていて、自分たちだけでもできそうですが。
森本 大きな違いは、情報の精度です。病院の超音波検査では「明日の夕方に排卵する」というくらいまで正確に分かります。排卵日の前後3日の間に複数回、夫婦生活を持っていただくといいですね。
ナヲ 超音波で見たら、そこまで細かくタイミングが分かるんですね。
森本 タイミング法の妊娠率は約5%です。この方法で妊娠しない場合は、人工授精へ進みます。
森本 人工授精は、仕組みとしては自然妊娠とほぼ変わりません。特に、男性不妊に有効な手段で、精子を洗浄して精鋭部隊だけを残して子宮の奥へ直接、届けるのです。精子が卵子へたどりつくまでの距離を半分程度に縮めてあげるイメージですね。成功率は8~10%といわれています。
黒住 ここまでが「一般不妊治療」。それでも妊娠しなければ、「生殖補助医療」へステップアップするわけですね。
森本 人工授精のチャレンジ回数のめどは5回。それ以上行っても、妊娠率が上がらないとされています。40歳以上の場合は、人工授精を3回行った次の段階から生殖補助医療、すなわち体外受精や顕微授精を検討するなど、ステップを早めるケースもあります。
体外受精まで進むと、ここで初めて「卵子の質」が分かります。卵子の質にはもともとバラつきがあるのですが、人工授精などでは今月排卵される卵子にきちんと受精能力があるかどうかまでは分からないのです。体外受精では、ホルモン剤を投与して複数卵子を育ててから、針で採卵します。そこに精子を混合して受精させ、受精卵を培養した後に子宮へ戻します。結果としてきちんと受精し、成長していける卵子を選別することができるのです。
もう一つの「顕微授精」という方法は、体外受精と似ていますが、精子の数が少なかったり、自力で卵子に潜り込むことができない場合などに特に有効です。体外受精では、シャーレの上で卵子と精子を混合しますが、顕微授精は精子1匹を直接卵子へ注入するのです。
体外受精や顕微授精では成功率が40~50%まで上がります。ですので、不妊治療を体外受精や顕微授精から始める方もいらっしゃいますし、治療の過程で、少し採卵をお休みしたいときは人工授精を試してみるなど、状況に応じてステップダウンすることも可能です。