積極的に治療に参加する男性が、最近は増えている

黒住 今回の保険適用でタイミング法から体外受精・顕微授精まで基本治療がすべてカバーされるのは心強いことですよね。ただ、不妊治療について、男性側があまり積極的になってくれないという話もよく聞きます。

日経BP 総合研究所 上席研究員 黒住紗織  「日経ヘルス」「日経ヘルスプルミエ」編集委員として、「乳がん」「更年期」「月経トラブル」など女性医療の取材に注力。著書に『わたしのカラダは私が守る 女性ホルモンの教科書』『やせれば本当に幸せになれるの? 「シンデレラ体重」が危ない』(ともに日経BP)。若い女性の低栄養の解消を目指す「ヘルシー・マザリング・プロジェクト」や月経不調の治療を促進する「生理快適プロジェクト」など、社会課題の解決活動に取り組む。
日経BP 総合研究所 上席研究員 黒住紗織  「日経ヘルス」「日経ヘルスプルミエ」編集委員として、「乳がん」「更年期」「月経トラブル」など女性医療の取材に注力。著書に『わたしのカラダは私が守る 女性ホルモンの教科書』『やせれば本当に幸せになれるの? 「シンデレラ体重」が危ない』(ともに日経BP)。若い女性の低栄養の解消を目指す「ヘルシー・マザリング・プロジェクト」や月経不調の治療を促進する「生理快適プロジェクト」など、社会課題の解決活動に取り組む。

森本 それが10年前と比べると、明らかに男性が熱心になってきたと、現場で感じています。コロナ禍で来院者の数を制限しているのですが、話を聞きたいからとビデオ通話で診察に参加する男性もいるほど。

ナヲ えぇ! 時代は変わったのですね。なんだかうれしいです。

森本 実際、現場の感触では、男性側に原因があるケースも約半数ほどあります。もともと精子ができにくかったり、精子が通る管が詰まっていたり、勃起や射精など性機能の障害があったりなどです。一方、女性側の不妊のメジャーな原因は、「排卵がない」「卵管が詰まっている」「精子が届いていない(子宮頸管の粘液分泌異常など)」「精子の侵入を妨害する抗精子抗体がある」の4つが挙げられます。

いずれも病院で検査をすれば判明しますので、妊活をスタートする時点で2人そろって病院に来ていただくことが大前提となるのです。

ナヲ そもそも何科へ行けばいいのですか?

森本 最初の窓口は、男性も含めて産婦人科がいいでしょう。「生殖医療専門医」がいるところだとより安心ですから、医師のプロフィルを調べてみてください。まずは相談だけでもいいので、気楽に訪れてみてください。

年齢制限や回数制限はあるの?

ナヲ さすがに無制限で保険が使えるわけではないですよね?

森本 40歳未満は通算6回まで、40~43歳未満は通算3回までです。この回数は、胚の移植についてのカウントです。タイミング法や人工授精に回数制限はありませんし、体外受精や顕微授精についても、採卵や凍結保存は何度でもできます。また、妊娠すると回数はリセットされます。

ナヲ 年齢とともに適用回数は減ってしまうんですね。私は40歳で出産しましたが、年齢が上がるほど、切羽詰まってくる気持ちはすごくよく分かるんですが。

森本 43歳以上で頑張っていらっしゃる方もたくさんいます。自費診療なら最新の技術を使いやすいですし、手厚い治療をしていきたいと考えています。

黒住 保険診療と自費診療をミックスすることはできるのでしょうか。

森本 原則として、日本では保険診療と自費診療の混合診療はできません。ただ、「先進医療」として認められたものであれば、保険診療にプラスして活用することができます。そして、多くの技術がこの「先進医療」として認められるようになってきており、さらにこれが増えるように私たちもお願いをしているところです。

治療負担の目安は人工授精で1万円、体外受精10万円前後

黒住 厚生労働省の調査によると、保険がきかなかったこれまでの不妊治療では、1回あたりの平均費用は、人工授精で3万165円、体外受精で50万1284円となっています。保険適用で3割負担になると人工授精は5460円。それに初診料や検査料が加わって1万円弱ほどですね。体外受精はどのくらいの負担になるのですか。

森本 1回で採れる卵の個数や先進医療を使うかどうかでも変わり、個人差はありますが、1周期あたり10万円前後を目安に考えるとよいと思います。また、治療にかかった費用が一定額を超えて高額療養費制度の対象になると、8万円ほどになる方もいます。しかも、凍結保存も保険の対象になるので、ぐっと選択の幅が広がるのではないでしょうか。

ナヲ 体外受精はものすごくお金のかかるイメージがありましたが、かなりラクになりますね。ただ、気になることがもう一つあります。仕事をしながらの不妊治療ってできるんですか?

森本 確かにいろいろな調整が必要でしょう。ただし仕事を辞めて、妊活に集中したから妊娠しやすくなるということはないんですよ。一日中不妊治療についてネット検索するなどで、ストレスがたまって活性酸素が増えると、ミトコンドリアもダメージを受け、卵子が老化して妊娠率にも影響が出てしまいます。仕事は人生にハリをもたらしてくれますし、精神的な支えになることも多いですよね。最近は不妊治療に理解のある企業も増えていますから、主治医と相談しつつ、会社の理解を得て、仕事を辞めずにうまく工夫して続けてほしいですね。

ナヲ なるほど。私も妊活をオープンにしたら、周りの人にサポートしてもらいやすくなりました。