若年時のジョブローテーションで多角的な視野を培う

――大林組では、若年職員がジョブローテーションで、いろいろな部門を経験すると聞きました。

澁谷 はい。私が大林組を選んだ決め手のひとつが、「現場、設計、見積もりの3カ所すべてを経験する」というジョブローテーション制度です。プロセスや現場の状況、コストを知らないままお客様に建物を提案したり提供したりはできない、と思っていたからです。

初配属は9階建ての商業ビルの建設で、杭工事や躯体基礎工事をするところから竣工まで1年半がかりの現場に設備担当として勤務しました。職種に関係なく何事にも挑戦させていただける環境で、先輩方が声をかけて下さることも多く初めての業務も乗り切ることができました。体力的には大変だった半面、現場の先輩や職人さんが気にかけて相談に乗って下さったり、差し入れの飲み物やお菓子を勧めてくれたり、アットホームな環境でした。

それにビル1棟の建設に、まだ更地の部分もあった状態から商業施設の営業開始後までトータルで関われるなんて滅多に経験できません。現在は見積もりの部署にいますが、どのプロセスの話をしても「あの工程のあの部分だな」と自分の引き出しの中から話ができるので、当時の全ての経験が今に生きています。

伊藤 設計職としての採用者も、最初は現場に配属され施工管理をします。4月に入社し全体研修を受け、ゴールデンウイーク明けに配属された先は新タワー建設工事事務所(東京スカイツリー施工現場)でした。1000人を超える職人さんが働く大きな現場です。内装工事の真っただ中、完成すると見えなくなってしまう隠ぺい部の写真を撮り、設計図通りに施工されているか、きちんと指示された工程通りに作業されているかを記録することが主な仕事でした。

学生時代の私にとって“壁”は図面上の2本線でしたが、実際に仕事をするなかで、その2本線にどれだけの人が関わっているのか、どれだけ時間と手間をかけてつくり上げていくのか、現場で働くことで身をもって学ぶことができました。

――皆さん、完成したときの達成感も大きいことでしょう。そこで得た知識や経験は、今の設計の仕事に役立っていますか?

伊藤 当時の上司から「現場をわかって設計をすることは、ときには意匠の自由性を奪うこともあるが、設計施工には大切な知識である。設計に求められることは何なのか、自分なりに設計とはどうあるべきか考えなさい」という言葉をいただき、今も心に留めて仕事に向き合っています。知ることは自分の視野を広げるチャンスだと感じます。

設計に配属されてからは、ローテーションで大阪や東京をまわりさまざまな用途の建物を経験しました。色んな場所に身を置くことで、何か困ったときも「これは○○さんに聞いてみよう」「これは△△さんに聞いてみよう」と頼れる先が増えました。自部門だけでなく、現場や生産設計部門など多くの人に育てていただいて今の設計スキルがあると感じています。

「晴れている日はスカイツリーが見えるんですよ」と伊藤さん。眺めが良い窓際のハイデスクで立ちながら仕事をすることが多いそうだ
「晴れている日はスカイツリーが見えるんですよ」と伊藤さん。眺めが良い窓際のハイデスクで立ちながら仕事をすることが多いそうだ

子育てをしつつ活躍する先輩女性たちの存在とアドバイス

――子育て中の方も多いですが、仕事と育児の両立について、活用している制度やご自身の工夫について教えてください。

髙橋 私は入社1年目のとき一緒に仕事をした先輩が子育て中でした。会社は子どもがいても充実した業務を任せてくれるし、独身・既婚・子どもの有無に関わらず「お互い様」とフォローし合う空気を体感しました。その先輩から制度や保育園などの情報も教えてもらえたおかげで、入社早々に「子育てしながら働く」ことをイメージでき、「一級建築士を取得してから結婚し、30歳までに子どもを2人産みたい」というライフ&キャリアプランを立てました。

全員 すご過ぎる!

髙橋 今思うとけっこう無謀だったかもしれません(笑)。25歳のときは主担当として仕事を任されていて多忙でしたが、上司に「一級建築士は絶対に1回で合格したい」と相談し、“合格のコツ”を伝授してもらったり具体的な学習方法をアドバイスしてもらったりと、応援していただくことができました。人と話すのが大好きで、常に人や情報に対してアンテナを張っていることが奏功したのかもしれませんが、大林組は人間味のあふれる先輩や上司のいる会社だと思います。

2児の母である髙橋さんは、常に、より働きやすい環境整備を進める会社の姿勢を、心から支持しているという
2児の母である髙橋さんは、常に、より働きやすい環境整備を進める会社の姿勢を、心から支持しているという

澁谷 就活のとき、大林組は他の大手ゼネコンに比べて管理職の女性比率が高く、女性が長く働きやすいと聞き、魅力を感じました。制度なども充実していると思います。

伊藤 そうですよね。コロナ禍による働き方の変革もあって、私は今9割近く在宅勤務(テレワーク)ですが、従来からITツールが整っているため自宅でも問題なく仕事ができています。保育園の送迎で時間の制約があることや夫が単身赴任中であることから、「顧客との打ち合わせや対面が必須な打ち合せ以外は在宅勤務とし、通勤時間を作業にあてたい」と申し出て今のスタイルに落ち着いています。制度だけでなく、それに快く応じてくれる上司やチームメンバーにも、とても感謝しています。