2014年に「日経ウーマノミクス・プロジェクト」の一環としてスタートし、新たな出会いの場を提供してきた「WOMAN EXPO」。9年目を迎えた22年は、5月28日に東京ミッドタウンで開催されました。「働く」「学ぶ」「健康・美容」をテーマにした多彩なセミナーのなかから、ここでは「リーダーに学ぶ!『withコロナ時代、新しい働き方とキャリアの築き方』」をリポートします。
リーダーたちはいかなる経験も必ず次のステップに活かす
最前線で活躍するリーダーたちに多彩なヒントを語ってもらうトークセッション「リーダーに学ぶ!『withコロナ時代、新しい働き方とキャリアの築き方』」には、アマゾンジャパンの豊留隆央さん、EYストラテジー・アンド・コンサルティングの小林暢子さん、フューチャーアーキテクトの神宮由紀さん、ボッシュのCHENG YANさんが登壇。ファシリテーターは、日経BP総合研究所の大塚葉上席研究員が務めました。
大塚葉(以下、大塚) 本日は、withコロナ時代の働き方やキャリアの築き方についてリーダーの皆さんの経験やお考えを聞きたいと思います。まず、キャリアの中でどのような出会いや経験が今のお仕事に活かされているかを教えてくださいますか。
豊留隆央さん(以下、豊留) Amazonには、「キャリア形成のオーナーシップは社員が持つ」という考え方があります。また社内ネットワークなどを生かしながら新しい職種にチャレンジする機会も提供されています。この機会を生かすメカニズムとして、「キャリア形成をテーマにした上司との1 on1 ミーティングを行うこと」や、「全世界のOpen Positionを一覧できるサイト」などがあります。
私もアマゾンジャパンへは、現在とは違う職種で入社し、プロダクトマネージャーの職種にチャレンジしたいと考え、キャリア実現のために身につけるべきことを上司から教わりながら、社内で情報収集をしていました。そんな中、14年にAmazon Payが日本市場に本格展開するタイミングで、現在のポジションに巡り合うことができて現在に至ります。
小林 暢子さん(以下、小林) 約20年のキャリアを振り返ると、常にドリフト(漂流)しながら働いていたなと思います。ときにはパートナーの異動に合わせてついていくこともありましたし。好きな仕事と生き方を続け日々の充実感を得ていたらここまで来た、という感じです。
私は、このようなキャリアドリフティングについて肯定的にとらえています。自分のよさや評価は、自分がやってみたいことや特技にトライしていくうちに見えてくるものだと思います。もちろん、キャリアドリフトの方法は人ぞれぞれでいいでしょう。例えば、最終目的は「世の中をよくする」ことに定め、そのための働き方であればキャリアや肩書を重要視しないといったドリフトなどもありだと思います。

神宮由紀さん(以下、神宮) 私は、キャリアパスやロールモデルを意識したことはありません。ただ、「地元の長崎を技術で元気な街にしたい」という思いを軸に仕事をしてきました。よく「社長になりたかったのですか?」と聞かれますが、まったく考えたことはなくて、目の前にある仕事に一生懸命取り組んできた、という感じです。プロジェクトの仲間やお客様の意見を積極的に取り入れながらチャレンジし続けてきたことで、今の自分があるように思います。
社長として多様な働き方ができる環境づくりを進めていますが、実は私自身が介護のために退職し、約2年間仕事をしない時期がありました。キャリアとしてはブランクだったそのときにいろいろ考えを巡らせたことが、今とても役立っています。ですから、どんな経験も必ず何かの役に立つと思います。
CHENG YANさん(以下、CHENG) 私は中国出身で、大学生で初来日したときに日本が好きになり、日本で働くことを決めました。働くなかで感じるのは、これは日本に限らずですが、昔からの制度や働き方のままでは改善や進化が難しいということです。そして、自信を持つことで人は成長するということです。
かつてドイツ人の上司に言われた「あなたに任せれば大丈夫」という一言が、私に自信を与えてくれ、成長につながりました。リーダーになった現在は、私がみんなに「あなたを信頼している」とメッセージを送っています。信頼していることを伝えてから「こうするともっとよくなる」と提案することで、誰もが気持ちよくフィードバックを受け取れ、改善のスピードも速くなると思います。