偏りのない広告は、消費者の購買意欲を高める
私たちが暮らしている社会では、さまざまな人が多様な生き方をしています。多様な人々を反映させない広告は、ステレオタイプ(固定観念)やアンコンシャスバイアス(無意識の偏見)を助長し、ジェンダー平等を遅らせるだけではなく、広告クライアント企業の収益やブランド認知に悪い影響を及ぼします。
ステレオタイプとは「男性は強くたくましい」「女性は、静かで控えめであるべきだ」といった、ある属性で人々をひとくくりにして、その特徴を決めつけてしまう先入観やイメージのことです。
アンコンシャスバイアスとは、このステレオタイプに基づき、無意識に偏った見方や物事の捉え方をすることを指します。例えば、「男性は重いものを運ぶ力があるから、手先を使う裁縫はできない」「女性は控えめだから、リーダーには向かない」といったものです。ステレオタイプやアンコンシャスバイアスはジェンダー平等が進まない主要な要因のひとつです。
ジェンダーバランスの取れた広告を出稿しているブランドは、男性または女性に偏った広告を出すブランドよりも優れた成果を上げています。全米広告主協会によれば、女性を平等に描く広告は、消費者全体の購入意欲を26%、女性の購入意欲を45%高めます(※3)。ステレオタイプにとらわれない先進的な広告は、より強い消費者とのつながりや話題性をもたらし、ブランド力を高めることができるのです。
広告が社会を動かす推進力になる
SDGs(持続可能な開発目標)の目標5「ジェンダー平等を実現しよう」を実行するために、UN Women(国連女性機関)は、広告が社会に持つ影響力を使ってジェンダー平等や女性のエンパワーメントを目指す「アンステレオタイプアライアンス(Un[無効にする]+ Stereotype [ステレオタイプ・固定観念]= Unstereotype)」を2017年に設立しました。
「男はこうあるべきだ」「女はこうあるべきだ」という考えが社会に存在する限り、そのような考えが私たちの思考と行動を縛り、一人ひとりの可能性を奪ってしまいます。そこで、UN Womenでは、広告内容を意思決定する立場にある広告主の企業がジェンダー平等と女性のエンパワーメントに関する意識を高め、自社の広告内容に反映することにより、広告が社会を動かす推進力になるーーと考えたのです。
グローバルな動きに続き、2020年5月にUN Women日本事務所は日本経済新聞社と日本アドバタイザーズ協会の協力を得て「アンステレオタイプアライアンス日本支部」を設立しました。2020年度は12社が参加し、2020年12月に閣議決定された日本政府の「第5次男女共同参画基本計画」には、ステレオタイプを取り除いていくために日本政府がアンステレオタイプアライアンスと連携していくことが盛り込まれました。2021年9月から始まる2年目も多くの日本企業の参加が予定されています。
広告表現で気をつけるべき「3つのP」
アンステレオタイプアライアンスでは、広告表現においてチェックすべきポイントとして、「3つのP」を定めています。
1つ目のPは、「どのような人物が登場しているか」を見る「Presence(プレゼンス:存在)」です。広告には、私たちが実際に住む社会のように男性や女性を含め、多様な人々が描かれるべきなのです。
2つ目は、「誰の視点からストーリーが語られているか」を見る「Perspective(パースペクティブ:視点)」。登場人物を性的な対象物として描いていないでしょうか。誰かにとって都合のいいイメージや役割を押し付けていないでしょうか。
3つ目のPは、「Personality(パーソナリティ:個性)」です。登場人物は実在する人間らしい人物として描かれているでしょうか。女性ならスリムでか弱い、男性なら背が高く強いなど、ステレオタイプな外見や特徴を押し付けていないでしょうか。
この3つのPを考慮した広告は、どういったものになるのでしょうか? たくさんの企業から聞かれるこの質問に具体的に答えるために、日本経済新聞社と日本アドバタイザーズ協会、そしてUN Women日本事務所が協力して設立したのが、冒頭で紹介した日記ウーマンエンパワーメント広告賞です。
従来のジェンダーに関する固定観念を打破する「アンステレオタイプ」という概念が日本の広告主や広告代理店、制作会社、メディア、消費者に広く浸透し、人間の多様なあり方、生き方が尊重される社会となるよう、UN Womenは引き続き取り組んでいきます。
■アンステレオタイプアライアンス日本支部の問い合わせはこちらUN Women日本事務所 所長
