抜擢してくれた人を信じて、思い切って挑戦してみる

── 学生時代から「いつか管理職を」といった上昇志向はありましたか。

唐木 学生時代は「さまざまな国の人と一緒に働きたい」と考えていました。「出世」に関心はありませんでしたが、働く中で、組織では職位が上がるほど決定権が大きくなることが理解でき、仕事の自由度が上がることに魅力は感じるようになりました。

特に子育てをしながら仕事をしていると、1日のリズムに「朝、子どもを保育園に送り、17時にお迎え」という軸が不可欠な場合も出てきます。そのような時、自己管理できる部分が多い職階であれば、1日のスケジュールをコントロールしやすくなります。

意外なようですが、時間の制限があっても仕事への自由度が上がるなら、あとは決断力と同僚・部下との信頼関係があれば、成果を上げやすくなるといえます。

── 一方、管理職を打診されると二の足を踏む女性が多いのが現状です。

唐木 学生時代は男女に関係なく、努力や成績で評価されていたように思います。それなのに、なぜ社会に出たとたん男性ばかりが上にいくのでしょう。女性はもっと自分に自信を持って、周囲の目を気にせず挑戦してほしいなと心から思います。ですから、まずはやってみることをお勧めしたいですね。

組織のリーダー層には女性に対してはチャレンジする機会を作り、勇気づけ、背中を押し続けてほしいです。つい言わなくても分かると思ってしまいがちですが、言わなくては分からない、言われて初めて気づくこともたくさんあるものです。

私も、大きなセミナーでの登壇や、パートナーやPwCの経営監視委員会メンバーへの就任など大役をいただく際には、毎回、自分にできるのか自問自答しています。でも、ふさわしいと言ってくれる人がいる以上、挑戦してみようという考えにスイッチして飛び込むことにしています。飛び込んでしまえば、できるかどうかではなく、どうすればできるのかという発想に変わり、物事が進んでいくものだな、と実感しています。

── 女性自身への勇気づけや意識変革が必要ということですね。

唐木 当社が女性活躍について分析した少し前の研究資料(*)に、インプットとアウトプットの比較による指標データがあります。インプットは教育機会や教育水準といった環境に関するデータです。アウトプットは、労働力全体における男女比率、指導的地位における男女比率、男女の賃金水準等の要因を考慮した、女性の社会進出に関する結果指標を算出したものです。

出典:Strategy&「日本のサード・ビリオン:勝ち抜くための組織変革~女性活躍に向けた8つの優先施策~」
出典:Strategy&「日本のサード・ビリオン:勝ち抜くための組織変革~女性活躍に向けた8つの優先施策~」

日本のアウトプット指標は128カ国中78位と下位に近いともいえる数字ですが、インプット指標は128カ国中29位と、悪くない。インプット(土壌)があるのにアウトプット(結果)につながらないという、極めて燃費の悪い、もったいない状況になっています。原因の1つに、幼い頃の「できるよ、大丈夫」「やりたいことを自由にやっていいんだよ」という声掛けや、具体的に認めてもらえる機会の不足もあるのではないかと、私は考えています。

(*)Strategy& 2014年「日本のサード・ビリオン:勝ち抜くための組織変革~女性活躍に向けた8つの優先施策~」。詳しくは こちら