次世代リーダー育成プログラムで自信を育む
── PwC Japanグループの次世代女性リーダー育成に向けた取り組みについて教えてください。
唐木 PwCでは数年前からグローバル全体で「New World. New Skills. 新たな世界。新たなスキル。」という取り組みに力を入れています。テクノロジーの進化により、働き方や生活が変わっていく中で、誰もが必要なスキルが身に付けられるように、3つの柱で支援しています。企業向けの支援、政策提言、そしてもう1つの柱がコミュニティ支援です。
PwC Japanグループ(以下、PwC Japan)ではコミュニティ支援の一環として、女子中高生を対象にした「Design your future」という次世代女性リーダー育成のための教育プログラムに協賛し、提供しています。一般社団法人スカイラボ(SKY Labo)が独自に開発した探究型のカリキュラムで、「デザイン思考」というアプローチを取り入れて、女子学生が「自分は必要な行動をとって、結果を出せる」と考えられる力、つまり自己効力感を育むための工夫を施したワークショップ形式のプログラムです。
── 女子中高生を対象にしている狙いと、プログラムの内容を教えてください。
唐木 女性は無意識のうちに「この枠の中に収まっていよう」と一歩引いてしまう傾向があるように見えます。そんな無意識を壊して、社会で活躍する土台となるマインドセットを育むことができれば、いろいろなものが大きく変わっていくと考えています。その土台をもって具体的なキャリアを考えてもらえるように、いわゆる文系・理系といった枠組みに入る前の女子中高生を対象にしています。
2021年はオンラインでの実施により、全国から32名の女子高校生に参加いただき、「Diversity and Inclusion(多様性とは。インクルージョンとは。)」というテーマに取り組みました。初日はデザイン思考やインタビュー手法について学ぶオリエンテーションです。2~5日目はグループに分かれ、世の中のニーズを探るユーザーインタビュー、ディスカッション、中間発表などを経てアイデアをまとめます。そして、最終日はスライドを使って英語でプレゼンテーションを行います。一連の体験を通して非認知スキルやクリエイティブな思考スキルを身に付け、自信を育むことが、イノベーターや女性リーダーとしてのマインドセットにつながっていくと私たちは考えています。

── 唐木さんはどのような役割で参加したのですか?
唐木 本プログラムのパートナーであるPwC Japanからは、各チームのユーザー役やコメンテーターとしてメンバーが参加し、私はユーザー役の一人を務めました。高校生たちが私の課題をインタビューで探り、解決するアイデアを提案してくれるのです。私が参加したチームは「エンターテインメント」がテーマで、家族や趣味、休日の過ごし方などについてインタビューを受けました。最初は緊張しながら事前に決められた質問をするだけでしたが、次第に掘り下げた質問が増えていきました。そして中間発表で出てきたのが、VRで世界や宇宙を旅行でき、コンサートを視聴したり、お土産を買ったりもできるスマホアプリ。趣味や興味などアンケートに答えると行き先を提案してくれるというアイデアも斬新でした。1週間というとても短い時間で、ユーザーのニーズをつかんでここまでの企画案を仕上げ、最終日は堂々と英語でプレゼンテーションができていて、成長ぶりに感動しました。
── 参加者がそこまで成長するポイントは、どこにあるのでしょうか。
唐木 考え抜き、仲間と議論し、自分たちで決める。その3つが揃うと自信が湧いてくるようです。自分に自信を持つためには、チームメイトや伴走してくれるコーチなど、自分の存在を無条件に認め受け入れてくれて尊敬できる仲間がいるといった、安心して発言できる環境があることも重要です。プログラムには、受講した女子高生だけでなく、彼女たちを支える役割として参加していたボランティアの大学生たちの存在があり、参加者を心理面・スキル面でサポートする体制がしっかり整っていました。この点も重要だったのではないかと感じます。発表後は、「不安だったがトライしてよかった」「大勢の大人の中で物怖じせずに意見を言え、自信になった」と、皆が笑顔で感謝とたたえ合いのメッセージを交わし合っていました。自己効力感を高めるだけでなく、幸せな気持ちになれるセッションでした。
── こうした取り組みが広がると、女性の生き方や働き方も変わっていきそうです。
唐木 女性の活躍の機会が増え、よりジェンダーフリーな環境になれば、男女問わず幸福度が増すと思います。世の中全体がインクルーシブなカルチャーになれば、最終的には、全ての人が他人や社会に敬意を払いながら自分らしく生きるというバランスのとれた社会になることでしょう。このような社会が広がることを期待しています。
取材・文/加納美紀 写真/佐々木実佳