平成生まれの33歳、2児の母であり、町田市議会議員でもある矢口まゆさん。専業主婦だった矢口さんは、なぜ突然、政治の世界に足を踏み入れたのでしょうか。さらに、2期目の選挙で日本維新の会の公認を得た理由とは──。働く女性が安心して子育てができる社会のために邁進する矢口さんのキャリアに迫ります。
保育現場の実態を目の当たりにし、「火がついてしまった」
2018年、乳児と幼児の2人を抱える子育て真っ最中の専業主婦だった矢口まゆさんは、あるでき事をきっかけに、政治の世界に名乗りを上げます。そのときの気持ちを、「火がついてしまったから」と表現する矢口さん。一体、何があったのでしょうか。
町田市では、在宅で子育てをしている家庭を対象に認可保育園などで、親同士、子ども同士の交流ができるイベントを行っています。「私も娘が小さいときに参加したことがありました。会場となっていた認可保育園に預けられていた1歳くらいの園児が、大人用と変わらない大きさのプラスチックフォークを口にくわえたまま歩いている姿を目撃したのです。その子のそばに保育士はおらず、もしも何かの拍子に転んでしまったら……と、想像するだけで血の気が引きました」

日本維新の会 東京維新の会、副政調会長/町田市議会議員
1989年、北海道釧路市生まれ。高校までを地元で過ごした後、上京。東京製菓学校第一部和菓子本科卒業。和菓子屋勤務、東日本大震災の被災地ボランティアなどを経て、22歳でビケンテクノに就職し、秘書業務に従事。その後、子会社の法人社宅営業部へ異動。開発営業担当として活躍し優秀な成績を重ねる。出産を機に退職。18年2月、町田市議会議員選挙当選(1期目)。22年2月、町田市議会議員選挙当選(2期目)。子どもの事故予防地方議員連盟発起人、幹事長。保育士資格保有
以来、この光景が頭から離れなくなり、授乳をしながら夜な夜な保育事故について調べ始めた矢口さん。すると、国から事故防止ガイドラインが発せられているにも関わらず、守られていない実態が散見されたのだと言います。
「例えば、窒息事故の事例があるのでミニトマトは丸ごと提供してはいけないとガイドラインにはありますが、ある保育園のホームページには、今日のお昼ごはんとして丸いままのミニトマトの写真が載っていたり……。一体どうなっているのだろうと疑問に思いました」
そして、「こういうことを正していくのが地域の政治家の役割。なのになぜ、誰一人としてこの問題を議会で取り上げていないのかと、怒りの火がついてしまったのです」
その後もこのような問題の解決策はないのか考え続け、ときには悶々とすることもあったという矢口さんは1年ほど経て、「もう、人に任せるのではなく、このような視点を持っている自分自身が政治の世界に足を踏み入れて行くしかない」と、ついに自ら行動に出ることに。元々政治の世界に興味があったわけでもなかった矢口さんは、まず“議員になるための本”をネットで購入するところからのスタートでした。
「数冊読み、選挙で勝つのは決して非現実的ではないと確信できました。計画的に進めれば子育てを優先しながら、家族を大切にしながらでも、選挙の準備はできるし、政治活動だってできる。子育てと政治の仕事を両立していける世の中にしていくことも、私の役目なのかもしれないと思ったのです。夫も、『表に出て一緒に選挙戦を戦うのは難しいけれど、できる限り応援する。議員の仕事に向いていると思うから』と背中を押してくれたため、町田市議会議員選挙への出馬を決意しました。勝つ気満々でした(笑)」