自立支援により、1人当たり1億円の財政的インパクト
最後に、官民連携の取り組みとして、ソーシャル・インパクト・ボンドの可能性についてご説明します。
我々は今、自治体や国の省庁との連携を進めています。今年から内閣府の休眠預金活用事業「シングルマザーのデジタル就労支援」を開始しています。22年2月にグラミン日本は休眠預金等活用法に基づく資金分配団体に初めて採択され、同年5月に一般社団法人シングルマザー支援協会とコンソーシアムを組み、シングルマザーのデジタル就労支援をいろんなソーシャルセクターと連携しながら進めていく事業です。
グラミン日本としては今後、貧困支援に関する財政的インパクトを考えていきたいと思っています。生活困窮者の方々が活用できるセーフティーネットとしての生活保護制度がありますが、国の試算によると生活保護費は2050年に約8兆円まで増加すると見られています。しかし、就労への投資を行うことで1人当たり7000万円から1億1000万円の便益が見込まれます。従って、生活保護を受けている人が経済的自立をして稼ぐようになると、1人当たり大体1億円の財政的インパクトがあると言われています。
グラミン日本としては、生活困窮者に対して経済的自立を促すことにより、このインパクトをつくっていきたいと考え、今インパクト評価モデルの導入を進めています。
具体的には女性の経済的自立に向けた支援を自治体と連携しながら行っています。自立挑戦を決意した方々に対してアウトリーチ(積極的な支援)しながら、生活支援や精神的な自立支援をして、さらにそこからデジタルスキルの習得と就労に向けた準備、そして実際の就労へと、入り口から出口までをいろんな企業と連携をしながら一気通貫で今進めています。
困窮する女性の自立をサポートすることによって、1人当たり約1億円の便益があると言われていますので、100人の自立で約100億円の財政的なインパクトがあり、その分だけ生活保護費の削減につながると考えています。
我々が取り組んでいきたいことは、中期的には生活困窮層の所得向上および貯蓄の形成であり、長期的には生活困窮からの脱却、親から子への貧困連鎖の阻止、そして社会保障費用の減少と税収拡大です。
グラミン日本は、「一歩を踏み出す機会を、あなたたちと共創したい」という取り組みを、より拡大し波及させていくことを官民連携で進めていきたいと考えています。
