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グラミン日本が目指す「社会課題解決と事業共創」[PR]

見えてきたマイクロファイナンスとソーシャルファイナンスの未来

Terraceで話題!

休眠預金を使ってシングルマザーのデジタル就労を支援

羽生 ありがとうございます。次に小林さん、よろしくお願いします。

多摩大学社会的投資研究所 主任研究員の小林立明氏
多摩大学社会的投資研究所 主任研究員の小林立明氏

小林立明さん(以下、小林) グラミン日本の顧問をしています。グラミン日本との関わりは、百野理事長さんがグラミン日本を立ち上げた頃からの付き合いで、最近になって顧問としてより積極的に関わるようになりました。本業は多摩大学社会的投資研究所の主任研究員として主にソーシャルファイナンスを研究しています。

 ソーシャルファイナンスという言葉を聞いても一体何のことだろうと思われるかもしれません。投資してただ経済的なリターンを追求するだけではなく、その投資を通じて社会的な価値をどのように実現するか、そういう新しい資金提供のあり方をソーシャルファイナンスと言います。

 グラミン日本では「休眠預金資金活用事業」を担当しています。休眠預金というのは10年以上、銀行口座で引き出されなかったお金のことです。これまでは銀行が自己資金に勘定していたわけですけれども、2018年に、休眠預金を社会に役立てるための「休眠預金資金活用法」が施行されました。

 グラミン日本はこの休眠預金を使ったシングルマザーのデジタル就労支援事業を2021年に開始しています。具体的には、シングルマザーを支援している4つの団体、「Animo Plus」「RE/MAX JAPAN」「ハートフルファミリー」「シングルマザーズシスターフッド」に対して、助成などの資金的支援や、事業運営、組織基盤構築などの非資金的支援を提供しています。

羽生 続きまして新田さん、よろしくお願いいたします。

開智国際大学客員教授/ちいきん会代表理事/eumo最幸顧問の新田信行氏
開智国際大学客員教授/ちいきん会代表理事/eumo最幸顧問の新田信行氏

新田信行さん(以下、新田) 私はもともと、銀行員です。第一勧業銀行(現・みずほ銀行)に入り、常務を退任した後、第一勧業信用組合の理事長を務めました。信用組合を退任してから日本中を駆け回りながら、社会的金融の活動に取り組んでいます。

 GABV(The Global Alliance for Banking on Values) という、「価値を大切にする金融」のためのグローバルなアライアンスに日本で初めて信用組合のトップとして参画し、そこで出会ったのがバングラデシュの有名なNGO「ブラック(BRAC)」です。BRACが貧困者支援のために行っている「価値を大切にする金融」のひとつの形としてマイクロファイナンスがある。同様にマイクロファイナンスに取り組んでいるグラミン日本とは、設立当初からお付き合いさせていただいています。

注目される「ソーシャル・インパクト・ボンド」

羽生 では、ディスカッションに移ります。最初の質問は「社会的金融の枠組みを活用する新たな仕組み作りとは?」です。金融という枠組みを活用しながら、サステナブルなソーシャルファイナンスにどうつなげていけばいいのか、伺いたいと思います。

中川 何かに共感したら、自然とお金を出して応援したいなと思うことってありますよね。そういう形をどうつくり出していくかは、グラミン日本として課題のひとつだと思っています。ひとつでもいいから成功パターンをつくっていくと、そこに企業や支援団体、いろんな仲間が増えてくると思うんですね。

 企業が取り組めることはたくさんあると思っていまして、いくらお金がかかり、どれだけの効果があるのか、それによって企業の評価がどう変わるのかを、わかりやすく見えるものを作っていきたい。もしかしたらそれが、金融の仕組みを変える第1ステップになるのかなと思っています。

小林 一番持続可能なものはビジネスだと思うんです。寄付はとてもきれいだし、行政による助成はすごく役に立つ。でも寄付と助成だけでは物事は続かない。ビジネスをどういうふうに活用して社会課題に取り組むかが出発点だと思います。

 ただ、グラミン日本が対象とする生活困窮リスクを抱えたシングルマザーに対しては、いろんな形での支援が必要になります。コーチングから始まって就労支援までやらなければいけない。研修費や、研修を受けているときの生活費のことも考えないといけません。そのためのひとつのソリューションがマイクロファイナンスになります。

 今、マイクロファイナンスが世界中で広がっています。グラミン創設者のユヌスさんが立ち上げた当初のマイクロファイナンス、すなわち「マイクロファイナンス1.0」は寄付や助成で運営されていました。ところが80年代以降、マイクロファイナンスは急速に発展して今大きな市場になっています。なぜこれだけ発展したのか。それはビジネスだからです。

 マイクロファイナンスが広がっているのは途上国や新興国です。これらの国々では金融アクセスが悪くてお金が足りない。高い金利を払ってもお金を借りたいという人たちがいっぱいいます。しかも人口自体が多い。これが、「マイクロファイナンス2.0」で、富裕層や投資ファンドによる営利型のマイクロファイナンスです。

 同じことを日本でやろうとしても、人口減少が続いていますし、そんなに高い金利は取れません。ですから、欧米で始まっているソーシャル・インパクト・ボンドを使って資金を提供するという方法が考えられます。

羽生 それが「マイクロファイナンス3.0」ですか。非営利というイメージが強かったのですが、それは「マイクロファイナンス1.0」のことで昔の話でしょうか。

小林 そうですね。「マイクロファイナンス2.0」でインパクト投資を行い、「マイクロファイナンス3.0」で投資プラス助成のハイブリッドにする。それがソーシャル・インパクト・ボンドという新しい仕組みです。簡単に言うと、社会的なインパクトが生まれたら、その達成度に応じてリターンを支払いましょう、政府もお金を出します、民間もお金を出します。そういう仕組みです。

 ソーシャル・インパクト・ボンドは、社会的にスケールアップしていくには手間がかかります。このため、困難を抱えている人たちへのスキル習得・就労支援事業への大規模な投資手法として、必要な人に直接、研修費用を貸すという「キャリア・インパクト・ボンド」という新しい試みが始まっています。

 研修を受けて就職活動したけど、収入のいい職場に就職できなかった、あるいはそもそも就職できないという場合、返済するために再び借金をする多重債務に陥ることがあります。このキャリア・インパクト・ボンドでは、そういう人たちには返済猶予をし、高い収入を得た人だけが返済してくれればいいという面白い仕組みになっています。グラミン日本でもぜひ導入したいと考えています。

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